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しおりを挟む「おい、その格好はなんだ?」
「え?」
ギュスターヴは、クレールと婚約してから頬を引きつらせることが増えた。
「普通に街で買い物するだけだと言ったはずだ」
まるで、夜会にでも行くようなドレスを着て現れたのにギュスターヴは、ぎょっとせずにはいられなかった。
「だから、これにしたんですけど?」
「は?」
クレールは、ギュスターヴの言葉の意味がわからずに首をかしげずにはいられなかった。
ギュスターヴでも、そんな格好をしたのを街で見かけたりしたことがないが、クレールはそういうのもよく見ていないようだ。
最初の頃は、まともなものを持っていないせいだと思って、あれこれと贈っていたが、それを着ようともしないのだ。
「この間、贈っただろ。あれを着ればいいだろ」
「え、あんな地味なの着たくないから、捨てました」
「は?」
ギュスターヴは、ケロッとした顔をして言うことに最初、何を言われたかよくわからなかった。
「捨てたと言ったか?」
「えぇ、そう言いました」
「っ!?」
クレールは、これまでルイーザに貰ったものは、そうしてきたため、悪いことだと欠片も思うことはなかった。
「婚約者からのプレゼントを捨てるだと?!」
「それが? 全然、私の好みじゃなかったし、お義姉様もあげたものだから好きにすればいいって言われてましたけど?」
ギュスターヴは、ルイーザのことでクレールから違う風に聞いていたが、このことがきっかけになって、クレールの異様さが浮き彫りになっていくことになるとは思いもしなかった。
ギュスターヴは、自分も人に言われた通りにするのが難しかったが、それでも着もしないで贈った張本人に好みではないとボロクソに言われても、捨てられていたら……。
「……欲しくて貰っていたのではないのか?」
「えぇ、そうですよ。その時は、物凄く欲しいと思うんですけど、しばらく見てるとどうでもよくなるんですよね」
「……」
あっけらかんと言うクレールに絶句するしかなかった。
そんなクレールにギュスターヴがプレゼントを贈ることはなくなった。更には、どこかに連れて行こうとするのもやめた。何を言っても好きな格好をして現れて、そんなのを連れ立って歩くなんてギュスターヴはしたくなかったのだ。
「バスティアン様!」
「……何か?」
「あなたの義妹をどうにかしてください」
「なぜ、私が手を貸さないといけないんだ?」
「なぜって、あなたの義妹ではありませんか!」
「養子として、我が家にいても、それだけだ。お前は、わかっていてルイーザから、あいつにしたんたろ?」
「養子なら、あなただって恥をかくでしょ」
「何度も言わせないでくれ。あれは、我が家にいるだけだ」
バスティアンは、面倒くさそうにギュスターヴにそう言った。
「大体、私にどうこう言う余裕なんてないだろ」
「?」
「あれと婚約したんだ。バシュロン子爵家の跡継ぎでいられないことくらいわかっているだろ?」
「へ?」
ギュスターヴは、跡継ぎでいられなくなると言われても、意味がわからない顔をした。
「だから、あれは養子縁組を父である侯爵としていないんだ。義母が出て行く時に残ると言っているからマンディアルグ侯爵家にいるが、養子縁組する気がないとあれは知っているし、君も聞いているはずだ」
「は? そんな重要なことを聞いては……」
バスティアンの言葉を聞いていないと言おうとしたが、ギュスターヴはそう言えばと思うことが頭にあった。都合よく記憶を修正する癖があっても、重要だからと書類にサインしたのは忘れられなかったようだ。
そこから、サインした書類を自室に戻ってよく読むとクレールと婚約したことで跡継ぎも外され、学園を卒業後は平民として生きるか。爵位を自分たちで、買うなりするというような内容が書かれていて、ぎょっとした。
「父上、母上! これは、何ですか!?」
「散々、説明したはずだが?」
「そうよ。納得したからサインしたのでしょ」
ギュスターヴが怒鳴り散らしても、クレールとの婚約を破棄しようとも、彼がバシュロン子爵家の跡継ぎに戻ることはないという文面に詐欺だと騒ぎ立ててもあとの祭りでしかなかった。
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