世の令嬢が羨む公爵子息に一目惚れされて婚約したのですが、私の一番は中々変わりありません

珠宮さくら

文字の大きさ
4 / 20

しおりを挟む

そんなカルメンシータが、隣国に行ってしまった。輿入れしたわけではない。彼女は隣国のダリオン国に留学しに行ってしまったのだ。

カルメンシータが、ご機嫌なまま隣国に行ったかと言うとそうなるまで色々あった。

そもそも、一番大変だったのは、見送りの日だ。


「お義姉様に会えなくなるのが、一番寂しいです」
「カルメンシータ様」
「よくわかる。私も、丸1日会えないと気が変になる」
「……」


カルメンシータは、留学に行く日にそんなことを言い出し、それによくわかるとばかりに頷いていたのはパトリシオだ。

エステファンアには全くわからないことで無言のままでいた。


「お前たちは学園に通っているから、頻繁に会えるが、私たちはたまにしか会えないんだぞ」
「そうよ。カルメンシータ。あちらと婚約すると決めたのは、あなたなのだし、今のうちに慣れなくては、辛いだけよ」
「……」


彼らの両親の言葉にパトリシオも頷いていた。カルメンシータは、それを言われて泣きそうになっていた。もはや、カオスでしかない。

この状況をどうしたら良いというのか。エステファンアは、ちんぷんかんぷんな顔をした。


(何で? そこで、この家族は共感し合えるのだろう??)


エステファンアは、全くわからない顔をしていた。でも、おかしなことにカステイリョン公爵家では、そんな家族に感化されているのか。使用人たちも、わかるとばかりに頷いていた。

でも、エステファンアはそこまで見ていなかった。


「カルメンシータ。せっかく、見送りに来てくれたんだ。あちらに着くのも遅くなる」
「そ、そうよね。お義姉様に見送ってもらえるのだもの。私、あちらでもっと頑張るわ!」
「えっと、身体には十分気をつけてくださいね」
「っ、もちろん。お義姉様の義妹として恥ずかしくない令嬢になるわ」
「……」


それにエステファンアは……。


(逆に私が義姉として、残念なままだと思うのだけど。……こんなにやる気になってるところ、申し訳ないけど、程々にしてもらえないかな?)


これ以上、差が生まれすぎたらエステファンアが益々浮いてしまう。エステファンア如きが頑張っても、差が広がる一方なのに。もっと頑張られたら、一生差は埋まらないだろう。

というか。エステファンアは、カルメンシータの言葉にさらにこんなことを思ってしまった。


(というか。まだ、頑張れる余裕があるの!?)


そんなことをエステファンアが内心で驚いているとカルメンシータは、決心がついたかのような顔をして、まばゆい笑顔を見せて、留学先に向かって行った。

その笑顔の素晴らしいことと言ったら、エステファンアでも見惚れるものだった。それを見て、すぐにこう思った。


(あの笑顔を見たら、あちらの王太子はカルメンシータ様に一目惚れするでしょうね)


エステファンアは見送りながら、そんなことをあれこれと思ってしまった。

その後、せっかく来たのだからとカステイリョン公爵家でもてなされることになったのだが、それもいつものことになりつつあった。


「エステファンア。ゆっくりしていってくれ」
「えっと、ありがとうございます」
「街で人気のあるお菓子よ。気に入るといいけれど」
「っ、」


そう言って、案内された場所はエステファンアにとって天国のようなところだった。


(なんて、素敵な光景なの!?)


エステファンアは、目を輝かせた。1日の楽しみは、おやつの時間だったりするエステファンアには、目移りするものが並んでいた。


「エステファンア。気に入った?」


パトリシオに声をかけられ、言葉にならず目を輝かせて頷くことしかできなかった。お菓子から目を離せなくなっていた。


「エステファンア様、よければお取りいたします」
「ありがとうございます!」


執事は、エステファンアにそう言われて嬉しそうにした。

それを他の者たちが、嫉妬の眼差しを向けて見ていることなど、エステファンアは気づきはしなかった。エステファンアはお菓子に釘付けになっていたせいだ。


「エステファンア様、お飲み物は、どうなさいますか?」
「えっと」
「エステファンア様のお好きなものから、今回のお菓子に合いそうなものまで取り揃えています。何なりとお申し付けください」
「凄い! ありがとうございます!」
「っ、」


そう聞いて来た人を悔しそうに使用人が見ているのも気づかなかった。

お菓子に目がないのだ。エステファンアは昔から、3食がお菓子でもいいほど、無類のお菓子好きなのだ。そして、世の令嬢たちが羨ましがるほど、どれだけ食べても体型に響かないのだ。

でも、そんなエステファンアの偏食っぷりを見かねた彼女の両親が、おやつの時間をきっちり決めたのだ。


「エステファンア。きちんと生活するのよ。そうでなければ、お菓子は食べられないわ」
「っ!?」
「そうだぞ。おやつを食べたいなら、きちんとしなければ」
「っ、」


両親にそう刷り込まれて育ったエステファンアは、お菓子のために1日を頑張るようになった。

そんな彼女が、至福の時を満喫している姿にパトリシオは一目惚れしたのだ。エステファンアは、お菓子に夢中になっていて、まるっきりパトリシオのことなど覚えていないが。彼は、しっかりと覚えていた。そして、何気にずっとエステファンアのことを密かに探していたのだ。

そして、パトリシオの家族や公爵家の使用人たちも、とても幸せそうにしているエステファンアを見るうち、すっかり虜になっていた。エステファンアが幸せそうにしていると和むのだ。

だが、そんなことで好かれているとは知らないエステファンアは、たまにカステイリョン公爵家でこの世の天国を満喫した後にその分を彼女なりに頑張っていた。

刷り込まれたことをアップグレードできないエステファンアは、図に乗ることは決してなかった。

そういうところも、好かれる要因となっていたようだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

断罪予定の悪役令嬢ですが、王都でカフェを開いたら婚約者の王太子が常連になりました

由香
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気付く。 このままでは一年後の夜会で婚約破棄され、断罪された上で国外追放されてしまう運命だ。 「――だったら、その前に稼げばいいわ!」 前世の記憶を頼りに、王都の裏通りで小さなカフェを開くことにしたエリザベート。 コーヒーやケーキは評判となり、店は少しずつ人気店へと成長していく。 そんなある日、店に一人の青年が現れる。 落ち着いた雰囲気のその客は、毎日のように通う常連になった。 しかし彼の正体は――なんと婚約者である王太子レオンハルトだった!? 破滅回避のために始めたカフェ経営が、やがて運命を変えていく。 これは、悪役令嬢が小さなカフェから幸せを掴む ほのぼのカフェ経営×溺愛ロマンスストーリー。

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

処理中です...