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しおりを挟む案の定というか。アルムデラは、納得できずに暴れ回り、それでも自力でどうにかしようととしていたエステファンアは、何かいい案がないかと考えていたせいでぼんやりしていた。そのせいで、アルムデラが暴れたのに気づくのが遅れてしまい、巻きこまれて突き飛ばされて、突然のことに受け身なんて取れるわけもなく怪我をした。
「貴様!!」
「っ、!?」
パトリシオが、エステファンアを突き飛ばされるのを見てアルムデラに殺気立ち、それは恐ろしいものを放ったのは、すぐのことだった。
そのせいで、アルムデラは腰を抜かし、パトリシオが人を殺しそうな勢いなのを必死で止めたのは、エステファンアだった。
本当に殺りそうになっていたのだ。そんなことになったら、大変なことになる。
(私のおやつが、しばらくなくなってしまうかもしらない)
まぁ、エステファンアが必死に止めたのは、そういうことだ。婚約者が、大変なことになるからではなかった。……いや、全部がおやつのためだけではなかったはずだ。
「パトリシオ様、駄目です!」
「……」
「私、今すぐ帰りたいです。手を貸していだけませんか?」
「っ、もちろんだ! すぐに医者に診てもらおう」
その場にいた者たちも、パトリシオの殺気立つのに微動だにできなくなっていた。そこで、声を出せたのは、エステファンアだけだった。
「あっ、」
「……二度とその顔を見せるな。次に見かけたら、エステファンアとて私を止められないかもしれんない」
「っ、」
エステファンアは、姫抱きされて帰ることになった。
それにエステファンアは、いやいや歩けますとは流石に言えなかった。
(勘弁してほしい。でも、おやつのため、おやつのためよ)
こうして、そんな格好でクエンカ伯爵家に帰ることになり、例の令嬢に怪我をさせられたと聞いて両親は、更に怒り心頭となり、前回よりも更に強くオルテガ侯爵家に言ってくれたようで、怪我の治療費にお見舞いなど、多めにくれた。
これで黙っていろと言うことかと思えば、アルムデラは養子先から勘当されることになったようだ。
どうやら、あの後で元婚約者の浮気相手を見つけ出して、アルムデラは凝りもせずに色んなところで騒ぎを起こしたようだ。クエンカ伯爵家をお金で黙らせても、無駄に終わったようだ。
それを聞いて、エステファンアは……。
(何で、令嬢の方を問い詰めるのよ。そこは、王太子を問い詰めるところじゃないの?)
そう思ってしまったが、彼女は最後まで破棄を撤回してもらう気でいたようだ。
養子先で、そんなことをした娘を実父母である試写家はアルムデラは養子に行ったことで、もはや他人だとして家に入れなかった。あちらは、まともな方たちだったようだ。侯爵夫妻から色々と言われても、どうしても養子にすると言ったのは、そちらだと言い、アルムデラのことでは何も言わないという書類もかわしていてサインもしているのだが、まだ言うのかと言ってそれによって侯爵夫妻は黙るしかなかったようだ。
王太子は、元婚約者が色々やらかしていることより、本命だった令嬢に嫌われているということをパトリシオに突きつけられて、魂が抜けたようになってしまった。よほどショックだったようだ。
そして、何を思ったか。隣国に留学しに行くと言い出し、国王たちが止めるのも聞かずに行ってしまった。留学するにも、申請やらが必要になるのを彼は知っているはずなのだが、手順や手続きのことをすっかり忘れていた。
これも、側近たちに仕事を押し付けていたせいもあったようだ。王太子なら、融通が効くものと味をしめたのもあったのかもしれない。だが、国内では、それでも何とかなっていたとしても、隣国でまでそれがまかり通るはずがない。
そのため、何をしでかすかわからないこともあり、連れ戻させようとするも、そこはハイスペックなところがまだ残っていたようだ。捕まえられなかったことから国王はすぐさま、王太子を廃嫡にした。
そんな王子すら、この国には元からいないかのように知らぬ存ぜぬを貫くことにしてしまったようだ。そこは、親子のように思えた。
(そんなことして、大丈夫なのかな?)
エステファンアは、カルメンシータがバウティスタと会って大変なことになるのではないかと思ったが、その頃には見事としか言いようがないことが起こっていた。
あちらで留学生で初めて全て単位の目途が経ったからと再び、ファラムンドと連立ってヴィティカ国に来ていたのだ。
それにエステファンアだけでなく、パトリシオも……。
「運がなさすぎるな」
「……」
エステファンアは、苦笑してしまった。だが、エステファンアを怪我させたと知るや否や……。
「ちょっと、用事を思い出しました」
「え、カルメンシータ様……?」
「ファラムンド様」
「うん。私も、ちょっと遠出してみたくなったな」
「っ、!?」
カルメンシータとファラムンドは、同じ思考をしているようだ。どこまで行く気だと聞く前にアルムデラのところに行きそうなのを察知して、エステファンアは止めた。
「そっちより、元王太子のバウティスタだ」
「それなら、私の国で迷惑なことされるのも困るから、別のところに行くようにしておいた」
「別のところ……?」
「もはや、王太子ではないんだ。そう簡単には戻れないだろ」
「……」
エステファンアは、どこへ行かせたのかを怖くて聞けなかったというより、聞いたら元王族だ。面倒に巻き込まれるだけだと思って、聞く気にはなれなかった。
(知らないことが、幸せなこともあるって言うし)
何はともあれ、エステファンアの周りが一気に平和になったようで、前より物騒にもなっている気がした。
(なんか、お似合いだな)
エステファンアは、益々物騒になったが、カルメンシータとファラムンドを見て、そんなことを思ってしまった。
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