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しおりを挟むエステファンアもまた、しつこい相手に掴まっていた。久々に学園に来たエステファンアは、会いたくないと思っていた令嬢に掴まっていた。
パトリシオが王太子に掴まっている辺りだったようだ。破棄をしてもお騒がせなところは、全く同じだったようだ。
「あんたのせいよ!」
「?」
アルムデラが、やって来たかと思えば、王太子と婚約破棄することになったのも、苦情や抗議を養子先の家にしたせいだと怒鳴られながら言われたのだ。
まぁ、怒鳴りながらでよくわからないところがあったが、大体はそんなようなことを言いたいようだ。
エステファンアは、パトリシオと婚約していなければ、それまでの彼女だったら難解すぎて何を言いたいのかがさっぱりわからなかったはずだ。
こんなことに慣れてきていて、何を言いたいのかが大体わかるまでになっていたようだ。嬉しいとは言えないが、パトリシオと婚約しているのだ。少しずつでも、慣れなければやってはいけないかもしれないが、こんなのを毎回相手にするのなら、勘弁してほしい。
(え? 苦情のせい……? あれは、王太子がカルメンシータ様とやっと婚約できると思ったからでは? 何で、全部が私のせいになってるの??)
そう思ったが、彼女は養父母にも散々叱られたようだ。まぁ、叱られないはずがないが。やっと、王太子と婚約したのだ。あとは、その流れに乗っていくだけだと侯爵夫妻は思って安堵していたのに。それが、思ってもいない方向に進んだとでも思われたのだろう。
どうにも、侯爵夫妻は、この令嬢と似ているようだから、破棄されることは微塵も考えてはいなかったはずだ。
失言をしたのはアルムデラだけがしたことで、それを聞き逃してしまった王太子が誤解されて連帯責任で苦情や抗議を言われた……とか、何とか言うことにしたようだ。
そう、バウティスタは言いようにアルムデラにではなくて、侯爵夫妻に伝えて婚約破棄をしたようだ。そうでなければ、すんなり婚約破棄できないことを思い知ったのだろう。アルムデラに話しても、この調子で通じはしないのだから。
(あの王太子は、そういうところだけは悪知恵が働くみたいね。……あ、ちょっと前までハイスペックだと言われていたんだから、頭の良さを使いこなせていたら、私なんて太刀打ちできないはずなのに。なんて、無駄なところでそんな悪あがきするんだか)
グダグダとアルムデラが破棄したがらないのを見かねて、そんな嘘をついたのだろう。嘘つきや騙したと他人のことをどうこう言えることはなくなっていたが、本人は自分がするのはいい人のようだ。
そんな人が、この国の王太子なのかと思うとエステファンアですらげんなりしてしまった。
「それで、私にどうしろと?」
「謝罪して。そして、バウティスタ様に破棄の撤回をするようにして」
「……謝罪? なぜ、私がするんですか?」
「は? 当たり前でしょ?! あなたが、告げ口みたいなことしたからじゃない!」
「……」
何が何でもエステファンアが、悪いせいだと言いたいようだ。それを聞いていて、エステファンアはため息をつきたくなった。
「その苦情は、私の家からだけではなかったはずですけど?」
「は? まだ、グダグダ言うの? あなたが、謝罪すればいいのよ!」
「……」
(面倒くさいな。同じ言語を話しているはずなのに。理解できない分野の難読な本を手にした時みたい。でも、これを理解したところで今後役に立つとは思えないけど)
エステファンアは、そんなことを思ってどうしたものかと思い始めていた。
「何、あれ」
「エステファンア様に謝罪させるなんて、馬鹿丸出しね」
「っ、ちょっと、そこ! 聞こえているわよ!」
「あら、聞こえるように話しただけよ。あなたと今更、婚約の破棄の撤回なんてなさらないわよ」
「何でよ!?」
「あの方、あなたと婚約している間、どれだけの令嬢と一緒いたと思っているの?」
アルムデラは、バウティスタが婚約者以外の令嬢を取っ替え引っ替えしていたのを知らなかったようだ。
「なっ、嘘つかないで!!」
「嘘じゃないわ。あなたが、煩わしくて仕方がなかったみたいよ?」
「っ、」
「まぁ、そんな取っ替え引っ替えしていた令嬢たちも、本命には敵わない存在でしかなかったみたいだけど」
「ほ、本命……?」
他の令嬢たちや子息たちも、アルムデラが全く知らないことに呆れていた。
中には取っ替え引っ替えに顔を青ざめている令嬢や本命と聞いて眉を顰めている令嬢もちらほらいた。
(みんなが、知っていることではなかったみたいね。……まぁ、中身が意外に残念だとわかっても、見た目だけで散々騒がれていたから、まだ見た目に騙されている人たちもいたみたいね)
エステファンアは、今更、アルムデラが本命うんねんや令嬢を取っ替え引っ替えしていたことを知ったところで、諦めるとは思えなかった。
なにはともあれ、この状況をどうしたものかと思案していた。
それこそ、今までのエステファンアなら面倒くさいからと周りがどうにかしてくれるのを期待して放置していたが、この時のエステファンアは自力でどうにかしようとはしていた。
婚約者のためではなく、おやつのために。
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