14 / 20
14
しおりを挟む王太子がやらかしたことは、それだけではなかった。まぁ、カルメンシータが留学生してから、やらかし続けていて、今度は何をしたかなんて知りたいと思う者もいなかったが。
数日、エステファンアはショックを受けたこともあり、学園を休んでいた。両親や婚約者が、心配して休むように言ったのだ。
それでも、エステファンアは休む気はなかった。
(私のおやつが、なしになってしまう!?)
だが、色々あっての休養だからとお菓子は食べてもいいと言われて、それにホッとして部屋でゆっくりしていた。
どこまでも、おやつのためにエステファンアは忠実なままだった。まだまだ、婚約者はおやつに勝てていないが、そこに気づく者はいなかった。
「え? バウティスタ殿下が、婚約破棄をなさったのですか?」
「揉めに揉めて破棄したようだ」
「……」
エステファンアはパトリシオから、それを聞いて、ぱちくりと瞬きをしてから、何となくわかってしまった。
あの時、カルメンシータが婚約破棄したと言ったのを聞いていなくなったのだ。
これは、つまり……。
(婚約できるチャンスだと思って、破棄したってことになるのかな?)
だが、既にカルメンシータは王弟のファラムンドと婚約しているのだ。それを知らなかったとはいえ、そんなバウティスタのことなど、気にすることもなく、またダリオン国に戻ってしまっていた。
元々、ヴィティカ国の学園の単位は全て取り終えていたようで、ダリオン国で全教科の単位を取るのにカルメンシータは躍起になっているようだ。
留学生が全部を卒業を延ばさずに取るのは至難の技というか。不可能とまで言われているが、カルメンシータはやる気でいるようで、元気いっぱいだった。
そんな風に勉強三昧なところを見て、あちらの王太子のエルピディオは……。
「侍らせるだけで、見た目がよくてお飾りの王太子妃がほしかったんだ。頭はそこまでよくなくていい」
「は?」
そんなことを言われて、カルメンシータは激怒したようだ。
「それ以前にご自分の頭の良さをご存じないようですね。そんな婚約者、こっちから願い下げです。あなたのような人に私はもったいなさ過ぎます!」
「っ、何様のつもりだ!!」
王太子が激怒しているところに王弟が居合わせ、そんなカルメンシータに惚れ込んだようだ。卒業までに必要な単位を取るのも四苦八苦しているような王太子だ。そんなのに言われたくないのは当然だが、それに激怒して手を上げようとまでしていたのだ。
それに王弟が、割って入らないわけがないが、カルメンシータはやられたら、それによろけた振りして往復ビンタでしてやっていたと言うのも気に入ったようだ。
あちらでは、エルピディオよりも、カルメンシータの人気がうなぎ登りに上がっていて、王弟とお似合いだと言われて騒がれているようだ。
そんなことが、留学を延長する辺りで起こったことのようだ。カルメンシータが王太子と婚約を破棄をしてから、王弟と婚約するまでにそれなりの時間がかかったのも、エルピディオが騒ぎ立てて大事にしたようだ。
それによって、ギリギリで卒業は難しそうだということが、国王と王妃にも知られることになり、逆に留学生のカルメンシータの才女っぷりに関心して、王弟との婚約に国王たちの方が乗り気になってしまったようだ。
今は、そんな王太子を見切って、第2王子を王太子にしようとしているようだ。それにも、エルピディオは抵抗しているようだ。懲りない人のようだ。
評判が急激に落ちたのは、ダリオン国とヴィティカ国の双方の王太子だ。やることなすことが、最低最悪な2人だが、どっちもどっちだと思われていたが、それが一気に傾いたのは、今回のことだ。
ヴィティカ国の王太子であるバウティスタが、カルメンシータが婚約破棄したと聞いて、自分もしたのにカルメンシータが既に別の人と婚約していることを知って激怒して騒ぎを起こしたのだ。
「また、騙したな!!」
「そんなことはしていません」
王太子は、再びパトリシオのところに来ていた。騙したと思い込んでいる王太子は、それはもうしつこかった。
パトリシオとて、あの場で破棄を知り、その後に婚約者を紹介されたのだ。騙しようがない。
だが、そんなことを言うよりもパトリシオは、白けた目を向けながら、こう言った。
「そもそも、私の妹の婚約と殿下に関わりはないはずですが?」
「っ、それは……」
「変な言いがかりはやめてください。そもそも、殿下。あれだけ、あからさまに妹に嫌われているの気にする必要ありますか?」
パトリシオは、王太子にはっきり言うことにした。しつこさの限界を超えたのといわれもないことを言われるせいもあった。
「え? き、嫌われている??」
「えぇ、一目瞭然。誰が見ても、わかると思いますよ」
「っ!?」
パトリシオの言葉に王太子は、いや、そんなまさかと辺りをきょろきょろした。そんなはずがないと味方してくれる人を探したようだが、周りにいる者はみんな信じられない者を見る目をしていた。
それは王太子に向けるものではなくなっていた。カルメンシータが留学する前までは、見られなかった光景がそこにあった。
バウティスタは、久しぶりに周りをよく見たような顔をしていた。
「まさか、気づいていなかったのか?」
「嘘でしょ。信じられない」
「あれだな。これまで、上手くいかないことがなかったから、わからなかったのかもな」
「婚約すれば、どうにかなると? なら、そもそも、何であんなのと婚約したのかしらね」
「っ、」
バウティスタのことをひそひそと話す生徒たちの言葉に王太子は顔色を青くさせたり、赤くさせたり、実に忙しそうにしていた。やっと周りの言っていることが耳に入るようになったらしい。
パトリシオは、そんな王太子に冷めた目を向けるだけだった。
130
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
断罪予定の悪役令嬢ですが、王都でカフェを開いたら婚約者の王太子が常連になりました
由香
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気付く。
このままでは一年後の夜会で婚約破棄され、断罪された上で国外追放されてしまう運命だ。
「――だったら、その前に稼げばいいわ!」
前世の記憶を頼りに、王都の裏通りで小さなカフェを開くことにしたエリザベート。
コーヒーやケーキは評判となり、店は少しずつ人気店へと成長していく。
そんなある日、店に一人の青年が現れる。
落ち着いた雰囲気のその客は、毎日のように通う常連になった。
しかし彼の正体は――なんと婚約者である王太子レオンハルトだった!?
破滅回避のために始めたカフェ経営が、やがて運命を変えていく。
これは、悪役令嬢が小さなカフェから幸せを掴む
ほのぼのカフェ経営×溺愛ロマンスストーリー。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる