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しおりを挟むパトリシオの両親である公爵夫妻も、エステファンアのような義理の娘ができるのをいつしか理想そのものと思うようになっていた。
公爵夫妻は見た目だけで、色々と騒がれて来たこともあり、何をしてもしなくても目立たずにいられない夫妻だった。結婚する前は、息子と娘がまさにこの2人の若い頃のようだった。
それが、息子が一目惚れしたという令嬢を探していた。必死になっていたかというとそこまでではなかった。
見初めたといっても、そこまで期待していなかったのだ。だが、息子が必死になって探してほしいと言い、その令嬢としか婚約したくないと言うのにそこまで言うならばと探し始めたに過ぎなかった。
それこそ、カステイリョン公爵家が本気になっていたらそんなにかかってはいなかったはずだと思うが、本気になっていてもエステファンアは中々見つけにくい令嬢だったようだ。
当の本人は、そんなことはないと言うが、パトリシオがいくら少年だったとは言えない彼ですら見つけられずに両親を頼るほどだったのだ。自力で見つけられたら見つけていたかったが、まるで夢幻を見たかのように掴まえられなかったのだ。
両親は、今でこそ、もっと本腰をいれて探していたら、もっと早くにエステファンアと出会えていたのにと悔やんでいるが、本気になって探していなかったとは、流石に息子に言えずにいた。
思いの外、探すのに手間取って見つけたら、パトリシオは彼女だと言うので、婚約させることにした。それまで経っても気が変わらない息子を見て、これ以上待てとは言えなかった。
婚約するだけでも、見たことないくらい大喜びしていた。子供らしい姿に両親はほっこりしつつ、不安は拭えていなかった。
そして、対面してエステファンアがこれまで見てきた誰とも違う反応を見せたのだ。
公爵夫妻を見ても、騒ぐこともなく、見とれることもなく、初めて見たかのようにしたのだ。
それは、パトリシオに対しても同じだった。これだけ目立つカステイリョン公爵家を知らなかった人物が、ヴィティカ国にいたのだ。
「あの令嬢は、私たちに興味がなかったのではないか?」
「あなたも、そう思われましたか? 私もです」
「……大丈夫なのだろうか」
「そうですね。息子にすら興味があるように見えませんでしたし、もしかして何にも興味がないのかも」
「……」
そんな不安を公爵夫妻は感じてしまった。だが、パトリシオがエステファンアはお菓子が好きだと言い、ならばと用意させていたお菓子を彼女が見ていっぺんしようとは思いもしなかった。
「っ!?」
目を輝かせて、お菓子を見つめたのだ。その目の輝きの美しいこと。宝の山を見たかのようだった。
公爵夫妻は、お菓子に負けたのだ。普通は、そんな令嬢だ。益々不安になるところのはずだが、長年色々あった夫妻は一般人とは違う反応を見せた。
「あんなに喜んでいますね」
「あぁ」
「私、お菓子に負けたの初めてかもしれません」
「奇遇だな。私もだ」
先ほどまで、パトリシオの言うことにもあまり反応していなかったが、お菓子に関することには違うようだ。
これまで、お菓子に嫉妬したことなどなかったが、エステファンアに出会ってから初めて妬ましいことも知った。
そのため、カステイリョン公爵家にエステファンアが行くと夫妻のみならず、使用人たちもエステファンアの輝く瞳を向けてもらおうと戦いが起こるようになった。
その瞳を独占することの方が、幸せな気分になるのだ。そんなことで気に入られているなどエステファンアが知るわけもなかった。
成績は悪くなく、むしろいい方だ。婚約してから、益々愛らしくなっていて、小柄ながらもぐもぐとお菓子を食べる様がリスのようでほっこりする。
息子の婚約者となってたゆまぬ努力をしているように見えたのも好印象だった。
もっとも、本人の努力ではなかったが、カステイリョン公爵家の使用人たちも、エステファンアの世話ができるのが嬉しい人たちばかりで、伯爵家で至れり尽くせりなまま、変わることはなかった。
そう考えるとアニマルセラピーのような役目を担っているとも言えるのかもしれない。
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