世の令嬢が羨む公爵子息に一目惚れされて婚約したのですが、私の一番は中々変わりありません

珠宮さくら

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そんな話を聞かされたファラムンドは、珍しくぼんやりしていた。それを見て、不思議そうにカルメンシータは声をかけた。


「どうかされましたか?」
「いや、エステファンア嬢は、そんなにお菓子が好きなのか?」
「え? とてもお好きですよ。……そうですね。お兄様より、お菓子がお好きだと思います」
「……は?」


流石にファラムンドは聞き間違いだと思って、カルメンシータを見た。あれほどの婚約者だ。その子息と婚約しているのに夢中なものが、別にあるのはいいが、一番ではないということに首を傾げたくなった。

だが、麗しの婚約者は、おかしそうに笑っていた。どうやら、聞き間違いではないようだ。これは、どういうことだろうかとファラムンドは、じっとカルメンシータを見た。


「そういうところも、好きなのです。お兄様は気づいておられないようですけど」
「……そこまで、なのか?」
「えぇ、お兄様の完全なる一方通行です」
「……」


そんなことを言い切るカルメンシータにファラムンドは、再びエステファンアとパトリシオを見た。言葉だけではわからないところを見定めるようにじっと観察を始めた。

パトリシオは、卒業パーティーでお菓子を見つけたエステファンアの世話をしていた。彼はダンスに誘いたくて薄々しているのに彼女はダンスよりも、お菓子に夢中なようだ。

どうも、エステファンアが卒業するのに卒業生たちが用意したようだ。色々あったが、すっかり餌付けされているようで、用意した面々にキラキラした瞳でエステファンアが嬉しそうに話しているのが見えた。

その中に子息もいて、パトリシオはキッ!と親の敵のように睨んでいて、在校生が震え上がっているが、エステファンアは全く気づいていない。目は、お菓子にしか向いていない。あぁなったら、他のことは考えられなくなるようだ。


「……あぁ、そうか。そうみたいだな」
「でしょ?」


ファラムンドでも、眺めているだけでわかってしまった。カルメンシータが言うだけはある。


「私も、お義姉様みたいにお菓子をどれだけ食べても体型が変わらなければ、付き合えるのですけど」
「……そんなに食べるのか?」
「3食が、お菓子でも構わないくらい。お好きなようです」
「……」


ファラムンドには、理解できないことだった。もっとも、そこまで好きなら体型が変わらないのは羨ましいのかもしれないが、その分、身長やらに回っても良さそうだが、それもないようだ。


「あのくらいなら、お義姉様が満喫するには丁度よいでしょうね」
「……」


つまり、あれではパトリシオはダンスまでこぎつけはしないということだ。用意した者を睨みたくなるのもわかる。ただのダンスではない。卒業パーティーなのだ。

でも、エステファンアにはその辺は全く関係ないようだ。普通の令嬢とは違うようだ。


「ふふっ、お兄様とのダンスより、お菓子なのですよ。この中で羨望の的になれるというのに。世の令嬢なら、誰もが羨む子息だったはずが、今や微笑ましそうに見られているのですもの。お義姉様に敵うわけがありません」


ファラムンドは、その言葉で周りを見た。彼は婚約者の卒業式だからと参加しているが、周りは……。


「あら、お菓子に負けているようね」
「ふふっ、あの方でも婚約者にはタジタジなようね」
「まぁ、どこぞの方よりずっといいけど」
「何だか、ずいぶんと親しみやすくなられましたよね」
「本当ね。あぁしていると私の婚約者と何にも変わらないように見えてくるから、不思議ね」


キャーキャーと色めき立っていたのが、嘘のように最近では、パトリシオを見かけても騒がなくなっていた。

カルメンシータの新しい婚約者の王弟を見ても、騒ぎにはならなかった。相変わらず、目の保養のようにしてくる連中はいるが、静かになったものだ。

逆にダリオン国の方が騒がしく思えるほどだ。前までは、逆だったのにカルメンシータたちが婚約したことで、見目麗しい2人に周りが騒がしくなっていた。

まぁ、あのお騒がせな元王太子が、信じられないほどダメダメだったのを知って現実を見たのもあったのかもしれない。

それでも、自分の若い頃によく似ていると思っていたパトリシオが、お菓子に負けたままなのを見てもいて、ファラムンドも微笑ましそうに見ていた。


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