世の令嬢が羨む公爵子息に一目惚れされて婚約したのですが、私の一番は中々変わりありません

珠宮さくら

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パトリシオは、そんな風に妹とその婚約者に見られていたことも知ることなく、ダンスに誘うことを諦めきれずにいたが、あまりにも至福の時とばかりにお菓子を食べるエステファンアを止められなかった。

お菓子を食べる姿を見て、彼は一目惚れをしたのだ。今も、その姿を見ると微笑ましくて嬉しい気持ちになるが、そのお菓子が妬ましく思えていた。

カステイリョン公爵家で、両親や使用人たちが、お菓子関連ですっかり変わるエステファンアに気づいて、餌付けしているのにも気づいていたが、エステファンアが喜んでいるからとほっといた。

だが、卒業パーティーで、こんなことになるとは想像していなかった。まさか、エステファンアを喜ばそうとお菓子を用意する者が現れるとは……。


「っ!?」
「……」


思わず、子息だけを睨みつけてしまった。在校生の令嬢たちは、エステファンアとお菓子談義に夢中になっている。

何となく、わかっていたが、認めたくなかったことがあった。どうにも、お菓子に負けている気がするのだ。だが、そんな馬鹿げたことあるわけないと思った。

この国の子息の中で、令嬢たちが取り合いをするほどだった。婚約してからも、色々と騒いでいたほどだ。誰が婚約者になろうとも、騒がしかったろうが、そんな自分が誰か別の子息に嫉妬することはあれど、お菓子に負けるなどあり得るはずがない。

そう、疲れているだけだとパトリシオは思ったが、まさにその時、妹とその婚約者がその通りだと納得しあっているとは思いもしなかった。

彼は、この後も度々、お菓子に負けている気がしたようだが、全て気のせい。疲れているだけだと思い込んで、それを認めることはなかった。

だが、そのうち、両親の方がカルメンシータたちと同じように息子は、お菓子に負けていると思うようになり、それを面白がることになった。

それでも、パトリシオは認めたくなかった。愛してやまない妻となった人が、我が子を抱っこしているのを見ながら、周りの誰もが仲睦まじく幸せいっぱいの家庭を築けていると羨むのに一番は……。


「え? 一番好きなものですか?」
「えぇ、やっぱりお菓子?」
「いえ、流石に」
「っ、」


それにパトリシオは、過剰に反応した。ここに来て、怖くて聞けなかった答えをようやく知れると思ったようだ。しかも、聞きたい答えを聞けそうだとなり、彼らしくなく聞く前から笑顔になっていた。

それを見て彼の両親は笑みを濃くした。


「一番は、この子です。お菓子は、流石に2番目です」
「っ、!?」
「そうなると夫は、3番目か?」
「え? いえ、もっと下です」
「っ、な、何で?!」
「え? だって、カルメンシータ様がいますから」
「っ、」


両親は、落ち込む息子を面白そうに見ていた。エステファンアは、何か間違えたかという顔をしていた。それこそ、エステファンアはもっと下と言ったのだが、それを読み解く元気もパトリシオには残っていないようだ。

それが、両親は滅多にない。初めて見る息子の落ち込みっぷりに声を出して笑いそうになったが、何とか堪えた。

そんなエステファンアのことをパトリシオは益々溺愛するようになったが、並々ならぬ愛を注いでも、我が子たちへの一番とお菓子には中々勝てなかったようだ。

妹には、何とか勝てたようだが、パトリシオが一番だと言ってもらうために粉骨邁進していることにエステファンアは全く気づいていなかった。

それでも、彼女にとっては幸せいっぱいの毎日だった。時折、夫となったパトリシオがやかましくなったが、それに首を傾げることもよくあったが、自分がその原因だということに気づくことはなかった。

もっとも、一番でなくとも結婚しているのだ。不満があれば、これからいくらでもできるが、それを全くする気のないエステファンアをパトリシオは見ている余裕がなかったようだ。

エステファンアは、家族に囲まれ、おやつもあり、幸せいっぱいで他に何か足りないと思うことのない満たされた日々を送り続けることができたのだった。


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