姉に問題があると思ったら、母や私にも駄目なところがあったようです。世話になった野良猫に恩返しがてら貢いだら、さらなる幸せを得られました

珠宮さくら

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それならばと由美は、女友達にその辺のことを話すのをやめて、男子に理解して同情してもらおうとしたようだ。だが、これまた散々なことを言われたのは、すぐのことだった。

女友達にしていた時よりも、あたりは強かったみたいだ。


「は? つまり、3つ下の妹にお弁当作ってもらって、貶してんの?」
「け、貶してるわけじゃないわ」
「なら、何? 弁当の中身が、茶色からって笑いものにするなら、自分で作ればいいだろ」
「そうそう。大体3つ下って、君の妹ちゃん、中1だろ? それが、姉のために頑張って作ってんのにそれを笑いものにするって、ありえねぇーよ。てか、姉貴のために作るなんて、めっちゃいい子じゃん。そういう子なら、家でも頑張って料理してんじゃねぇの? 中1で、そこまでしてんのに姉貴のあんたは、何なの?」
「っ、」


そんな風に男子にまで言われることになったのは、由美が嘘をついたからに他ならない。女子たちが、由美のことを色々と言っているのを耳にしていて、作ってもらったのか。本人が作っているのかは定かではないが、美穂の味方をした男子は親が共働きで自分で作っていたり、片親が作ってくれたりしていて、料理も自分でやっているから苦労がわかっていたようだ。

頑張って作っているものを全く知らない連中に笑いものにされていたら、自分なら嫌だと思って由美にそんなことを言ったようだ。

それを知っていたら、由美のクラスの男子と話が弾んだかも知れない。弾まなくとも、由美に毎日のように笑いのネタのように使われていたのだ。それなら家の中でも散々な目に合っているに違いないと可愛がっていたに違いない。

だが、美穂は彼らに会うことはなかった。姉妹がよく似ていたら、美穂が由美の妹だとわかったかも知れないが、そうはならなかった。

美穂としては、そんなきっかけで会いたくはなかったので、そうならなくてよかった。

由美としたことに全く関係していない美穂は、姉に八つ当たりされることになったのは、この後すぐのことだった。

とにかく由美は妹が、他の人に褒められたりするのを聞くのも、見るのも好きではない。姉妹でも、自分の方が優秀だと祖父母に言われてきたせいかも知れないが、馬鹿にされたり貶されたりするのが、とにかく嫌いな人だ。それが、妹よりも下のように思われることも加わると駄目だった。

そんな風に味方してくれると思っていた面々に由美は色々言われたことで、帰宅してから美穂は、数え切れないほど理不尽な目にあわされた。このお弁当の時も酷かった。


「美穂! 明日から、お弁当は、あんたが作って」
「は? お弁当は、必要な人が作るって言ったの姉さんでしょ?」
「あんたのせいで、私が馬鹿にされてんのよ! いいから、言われた通りに作ればいいのよ!!」
「……」


(私のせいって、また変な嘘ついたのね。それで、どうして私がお弁当を作ることになるんだか。一体、何があって私は八つ当たりされてるんだろ。聞きたいわけではないけど、どうせ私の悪口ね)


流石に理不尽すぎると思って美穂も珍しく抵抗したが、そんな抵抗で敵うわけもなかった。本気で抵抗したわけではないが、美穂はお弁当を作るはめになってしまったのだ。それにげんなりしてしまった。今月に入って、何度か。げんなりさせるのが姉は物凄く上手いのだ。


(姉さんだけのお弁当なんて作る気にはなれないわ。姉さんみたいな茶色のものばっかりつめてやりたくなる。それか、他の色一色とか?)


それでも、お弁当を作らないわけにはいかない。忘れたなんて言ったら、暴れまわるのは目に見えている。それどころか、罵詈雑言を浴びせかけられるのは目に見えている。

姉のお弁当を睨みつけても、解決されることはなかったが、本人を睨みつけられないのだから、ストレスはたまる一方だ。


(ストレスがたまっても、穏便に済ませることを選ぶしかない。暴れ回られるだけならまだしも、料理を作りたがられるよりは、マシだもの。マシだけど、どうしようかな)


ご機嫌取りのように姉の好物ばかりをつめるなんて絶対にしたくない。そんなことに労力は使いたくない。

姉を喜ばせることは、美穂はしたくなかった。そんなことをするのに時間さきたくない。


(一層のこと、レトルト食品でも詰めてやろうかな。どうせ、味なんてわかりっこないんだし)


ついつい、嫌がらせをかんがえてしまう美穂がいた。日頃の鬱憤がだいぶたまっているようだ。


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