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しおりを挟む母にも由美は噛みついて、母の方も美穂と同じく言いたいことを由美に言ったようだ。
美穂があえて言わなかったことを母は、由美に伝えたのだ。それは、由美のためというより、悪意の方が強かった気がする。
「美穂が悪いのに何で、わかってくれないのよ!!」
「悪いのが、美穂だけだと本当に思っているの?」
「じゃあ、私が悪いって言うの? 全部、私が悪いって言いたいのね?! 酷いわ!」
「いいえ。みんな、それぞれ悪いところがあったのよ。だから、これからは……」
「違う! 私は、何も悪くない!! 悪いって言うなら、美穂と母さんだけが悪いのよ!」
由美は頑なに自分は何も悪くないと言い続けていて、母はそれにイラッとしたようだ。通知表のことで偽造をしたのが自分だと伝えた後は更に酷かった。
「何が、私が悪いよ! 母さんも、美穂も、私のこと笑いものにしてたんじゃない!! 酷すぎる。あんまりよ。2人して、私のこと笑いものにしてたなんて酷すぎるわ!」
由美は母とも美穂と大喧嘩した後、しばらくしてやり合ったようだ。姉は話しかけて来てはいないが、留守電で通知表の偽造うんねんのことを知ったらしく、ボロクソに言っているのが入っていた。一件だけじゃなくて、目一杯入っているのに全部を聞くことなく、最初の留守番以外は全て消去した。
その後、由美は祖父の法要には来なかった。就職したところでも、思っていた部署に中々配属されることがなくて、それでも我慢するしかないと思ったのか。渋々引っ越したようだが、母と美穂と絶縁すると出て行ったっきり、由美がどこで何をしているかを探るようなことは、美穂はしなかった。
(はっきり言い過ぎたかな。でも、無事に就職できたみたいだし、また何かあれば連絡して来るわよね。話す気はなくても、留守電に入っていたみたいにボロクソに言ったのが、勝手に入ってると元気なのはわかる。……姉さんが元気なのを気にする日が来るとは思わなかったわ)
美穂は、そんなことを思っていた。それこそ、美穂としては、由美に噛み付かずにいつものようにやり過ごしていたら、絶縁されることもなかっただろう。あからさまな無視をされるくらいで済んだに違いない。
「やれやれ、大人なんだから割り切って法要には来てくれるかと思ったけど、大人にはなりきれなかったみたいだね。まぁ、あの子が来たら機嫌を取らなきゃならないから疲れるだけになりそうだけど」
「あの子は、父親に似たみたいね。美穂まで似なくて良かったわ」
叔母や祖母は、母がいない時に美穂にそんなことを言った。
「ショックだったんだよ。通知表を偽装して、私の名前にしてたの母さんだったのを母さんから聞かされたから」
「「え?」」
祖母と叔母に由美が残した留守電を美穂は聞かせた。
すると母を祖母たちが問い詰めて、そこからが酷かった。
「美穂! 何で、あの話をしたのよ!!」
「姉さんだけが悪く言われるのが、我慢ならなかったからよ。私たち、それぞれが悪いんでしょ? なら、私も悪いことをするだけよ。姉さんには、黙ってた。共犯みたいにされて言えなかった。何で見たくない私に姉さんの成績を読んで聞かせたりしたの?」
「それは、あっちが成績を知ろうと机の中をあさっていたからよ。あなただって、やり返したくて、平手打ちしてたのと一緒よ」
母の言い分に美穂は、眉を顰めていた。
「一緒になんてされたくない」
「一人暮らしを始めた途端、由美とそっくりになったわね。やっぱり、父親の血ね」
「そうかもね。両方に似たから、仕方がないわ」
(どうして、母さんが父さんと結婚したのかと思っていたけど、もうどうでもよくなった)
そこが一番の疑問だったが、それを聞くことはなかった。もし、美穂は自分が母親にそっくりだとしたら、駄目な男に惚れてしまう要因を受け継いでいそうなのと本当は何があったのかを知るなら、第三者からではなくて、母に直接がいいと思っていたが、それすらどうでもよくなっていた。
美穂のことも、理想の娘と言えなくなったと思ったのか。美穂は、母から絶縁すると言われることになったのは、すぐ後のことだった。
それに美穂は、ショックを受けることはなかった。むしろ、スッキリしてしまった。
(大事で大切な家族なんて、最初から私にはいなかったんだわ。それを母だけは大事な家族だって思い込もうとしていた。でも、こんなにあっさりと絶縁するって言われる程度だったのよね)
祖母や叔母だけでなくて、騒ぎ立てている間に伯父たちも何があったかを知ることになり、責め立てられることになったのは、美穂ではなくて、美穂の母だった。
それにかなり頭にきたようで、実家に置きっぱなしの荷物を美穂は全て捨てられることになったのは、この後、すぐのことだった。
でも、元々、実家には一人暮らしのところに持って行きたくないものしかなかった。捨てたくとも捨てられないものばかりだった。
(母さんとの思い出をあっちに残していただけだったから、捨ててくれてよかったわ。凄いスッキリした)
母が、本当に捨てたのかはわからないが、美穂がそれにショックを受けることは全くなかった。
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