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しおりを挟む親友との楽しい、楽しすぎる卒業旅行を終えてから、ユズカは両親のお墓参りをしに行った。
おばあちゃんが見晴らしのいい場所にお墓を建ててくれて、年に一度はそこに来てお墓を綺麗にしていた。
大学に入るまでは、おばあちゃんと一緒に来ていたが、大学生となってからは一人で来ていた。
1年に一回しか行かないのだが、お墓が雑草やらで大変なことになるのを見たことがなかった。ユズカは、それを不思議に思ったことはなかった。
それが当たり前のようになっていた。他の墓も、荒れるなんて姿を見たことがないため、すっかりそれがユズカの当たり前になっていた。
「やっと内定もらえて、就職先が決まったよ。色々、ハラハラさせてたかも知れないけど、安心していいからね」
お墓に語りかけるようにつもる話をユズカはした。ここに来るといつも、そうしていたから、これをしないとしっくり来なかった。
(……そういえば、あの日、どこに家族旅行に行ったんだっけ?)
考えても、思い出せなかった。
ここに凄く似たようなところだったが、外国のようなところだったのは確かだ。
(あれ? ここも、外国みたいだな。……というか、前に住んでたとこって、なんて名前だったっけ?)
住んでいた地名どころか。日本という単語すらユズカは思い出せなくなっていて、その辺りが変な気分になったが、思い出せなくても別に困らないかと思い直し、ユズカは深く考えることをすぐにやめた。
就職先も決まったのだ。前に住んでいたところに戻る気も全くないのだから、無理に思い出すこともない。
ただ、思い出せるなら思い出したいことがユズカにもあった。
あれから月日が経っていて、両親の声が思い出せなくなっていることが寂しく思えてならなかった。
(パパ、ママ。今、私のことを呼んでくれても、それが両親だってわからないかも)
そう思うと月日が、かなり経った気がしていた。
「なんだい。帰って来てたのかい?」
「おばぁちゃん?!」
しんみりしていたところに声をかけられて驚いてしまった。
ユズカのおばあちゃんは相変わらずな格好をしていた。振り返ってユズカが見たおばあちゃんは、古めかしい黒のドレスに相変わらず真っ赤な靴だけがピカピカで新品のように見えた。とんがり帽子をかぶって、気配もなくユズカの後ろに立っていて、これで慌てないわけがない。
(いつも、気配なく立ってるのよね)
歩いて来たら踏みしめる音がしていたはずだが、全く聞こえなかった。それほどまでに集中していたようだ。
よくよく見れば、足跡がおばあちゃんの立ってるところにしかないことに気づいても良かったところだが、ユズカはそこまで見てはいなかった。
「お墓参りに来てたのかい」
「うん。おばあちゃんこそ、いつ、帰って来てたの?」
「今さっきさ」
(その言い回しも相変わらずだな)
おばあちゃんはお気に入りの魔女スタイルで、ユズカが驚いたのを楽しげに見ていた。
仮装をしていると思っていて、人間っぽくないところを瞬時に見つけるのは早くなっていたが、それ以外をよく見ようとすることをしなかったために重大なヒントをいつも見逃していた。
「寄ってくだろ?」
「いいの?」
「良いも悪いも、お前の家じゃないか。それに長らく留守にしていたからね。掃除も手伝っておくれ」
「……おばあちゃん、そっちがメインだよね?」
「ひっひ、当たり前だろ? 孫は、お前しかいないんだ。おばあちゃん孝行しても損はないよ。そうだろ?」
「掃除くらいで孝行になるの?」
「なるよ。あたしのしてほしいことをしてくれるんだ。孝行に決まってるさね」
「そっか。なら、手伝うよ」
ユズカは、おばあちゃんに久しぶりに会えたのが嬉しかったが、いつものようにいいように使われている気も否めなかったが、日帰りにしようと思っていたのを一泊して帰ることにするまで、すぐのことだった。
(おばぁちゃんの手料理が食べられる!)
夕食はユズカの好きな物ばかりが並んだ。そのせいで食べ過ぎてしまって、お腹をポンポンと叩いて苦しむまで、そんなに時間はかからなかった。
(た、食べすぎた)
最近、こんなことばかりだ。嬉しくなりすぎて、飲みすぎたり、食べすぎたりしている。ユズカは、それを思い出してお腹周りを思わず手で触った。
(太った気もするんだよね)
ユズカは、それを考えてしまい思わず遠い目をしていた。
「そういや、ユズカ。卒業試験の方は、大丈夫なのかい?」
「え?」
「内定もらえても、試験に落ちてたら、意味ないだろ?」
「……」
(っ、すっかり忘れてた~!?)
そこから、おばあちゃんの得意分野の特別講義が始まってしまい、お腹いっぱいになって大変な時に眠気も合間って集中するのが、とてつもなく大変だった。
ちょっぴり一泊なんてせずに帰ればよかったかもと思ったりもしたが、この講義のおかげで、卒業試験の点数がよかったのだから、おばあちゃんのおかげでしかない。
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