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しおりを挟む「はぁ? ルシンダが、ワイズ国の王太子と婚約した!?」
「そのようですよ」
「っ、」
アミーリアは、ワイズ国の第2王子にそう言われてイラッとするのを隠すことはなかった。自分が婚約した弟の王子だ。王太子とは見た目が全然違っていて、アミーリアの好みの王子だった。
あれから、勉強を頑張るよりも、アミーリアは王太子を引きずり下ろすことに躍起になっていた。そのために第2王子と距離をつめるべく、仲良くするのに躍起になっていた。
王太子が複数の女と浮気していて、心痛める令嬢を演じているアミーリアは、ルシンダが隣国で幸せになっていることを聞いて、そんな演技をすっかり忘れて腹が立って仕方がなかった。
王太子が浮気しているのに心を痛めすぎて勉強が思い通りに運ばないように装っているが、ようは勉強が是が非でもしたくないだけなのだ。
その上、王太子を引きずり下ろした後に第2王子と婚約したいから、彼と仲良くなるのに余念もなかった。
だから、忙しいのだ。それなのにルシンダが、再び玉の輿に乗っていることに苛ついて仕方がない。
「でも、あの国の王太子は物凄く変わり者らしいので、兄上よりも厄介かと」
「厄介……?」
苛ついていたアミーリアは、首を傾げた。そこに愛嬌があれば何とかなる令嬢はいなかった。前までの魅力が、彼女から嘘のように消えていることにアミーリア自身が全く気づいていなかった。
「令嬢たちにも見た目だけは良いが婚約者としては、絶対に嫌だと思われるような方です」
「……」
にっこりと王太子とは似ても似つかない顔をした第2王子が言うのを聞いて、アミーリアはなぁんだと思ったのはすぐだった。
それこそ、ルシンダはまたハズレなのと婚約したのだと思った。見た目がよくても、誰も婚約したがらない王太子となんて、気の毒とまで思うのも早かった。気の毒だが、幸せになれていないのにどうでもよくなった。
安堵したというより、途端につまらなそうな顔をしたアミーリアのことを第2王子は冷めた目で見ていることにも気づいていなかった。
腹違いとは言え、そんな人から婚約者を奪ったのに自分は全く悪くはない被害者のようにしていることにも腹が立つほどだった。
第2王子は、目の前の兄の婚約者となったアミーリアが元々好きではなかった。頑張るところを全く勘違いしているところからではない。この国でも、隣国でも、愛嬌だけで好き勝手にしていて迷惑している者が大勢いることも、どうでもいいのだ。
その上、今はあの王太子からどうにかして逃れて、自分が幸せになるために必要なことを必死にしているようにしか見えない。
抱き込もうとしているのがありありとわかっていて、こんなのに付き合わされる日々に王子の方が辟易していた。
王太子の愚痴を押しかけて来て聞くはめになるのだ。好きになるはずがない。もっと嫌いになっている。
いい加減、付き合うのも面倒になっていたのもあり、隣国の様子が気になるからと留学すると言えば、あっさりと見送ってくれた。
それは、拍子抜けするほどだった。いくつもの言い訳を考えていた王子は、馬鹿みたいだと思っていた。
そこには、ルシンダがどうしているかを知りたかったのもあったようだ。
「……やれやれ、あれでは留学から戻っても会わなくて済みそうだな」
リグリー国に行くとは一言も言っていない。ルシンダの様子を何度も見てくることに返事はしていない。ただ、笑っていただけで済んだ。
王子は婚約したい令嬢がいるから、彼女を見に行くだけだ。アミーリアに付き合うより、有意義なことになりそうだと思っていた。
リグリー国の王太子ほど怒らせてはならない人物はいない。その人物が、ルシンダを気に入ったのならば、関わらせない方がいいに決まっている。そうでなければ、ワイズ国が蹂躙されかねない。
そうならないために第2王子は婚約しようとしているのだ。その邪魔をさせるわけにはいかない。
彼の兄も浮気しすぎていて、執務が溜まっていた。それを第2王子が肩代わりしていたのもあったが、それをやるのに疲れていて、留学に行っている間に仕事にならないとなって苦情が殺到して、何をしているかがバレることになるはずのも、時間の問題だ。
「全く、いつまで婚約者のせいにできると思っているのやら」
婚約者が気に入らないから浮気しているのなんて、そもそも言い訳にもならない。それすらわからず、深みにはまってしまった王太子に冷めた感情しか持てなかった。
この国では、妻を複数持つ貴族も多くいた。今は、それも少なくなっている。それこそ、アミーリアたちの母親のように醜い争いを繰り広げれば家の恥にもなるのだが、あの家の当主はそれより跡継ぎが大事で娘たちなんて使えない存在と未だに思っているようだ。
「あぁはなりたくないな」
なりようがないが。そんなことをしたら、リグリー国の王太子に何をされるかわからない。
アミーリアのことでは足取り軽く出かけられた。アミーリアの愛嬌のみで、媚を売るしか能のない令嬢に靡く王子ではないことにアミーリアは全く気づいていなかった。
途中で、あちらの王太子に誤解されたら命が危うくなるかもしれないと思うと生半可な態度は許されないとばかり第2王子は気合を入れ直した。
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