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1、国の加護と試練の始まり
しおりを挟むこの国の初代が、妖精王の妃を助けたことがきっかけとなり、お互いが理想とする国の話で、2人は意気投合した。そんなこともあり、妖精王は強い妖精の加護の力を国王の国にかけて守ることを約束した。
だが、人間の心は虚ろいやすいことをよく知っていた妖精王は……。
『ただ与え続けられるだけの加護にしてしまっては、あなたが理想としている国とは程遠いものになりかねぬ』
それには、初代王も同意見だった。ならば、どうしたものかと2人は考えた。
王太子とその婚約者が代表して妖精王からの試練を受け、加護を与え続けるに値する人間であることを証明することで、継続するという誓約がなされた。
こうして、この国に妖精の加護が与え続けられることになって、数百年の月日が流れた。
その試練のことを今、この国の多くの人間は、“呪い”と言うようになっていた。
酷くさせなければ、なんて事はない。そこは、妖精王が絶妙に調節をしている。死の呪いではなく、痛みを伴う呪いでもない。……最初は、だが。
今の王太子のバンダカの婚約者はロメリアという名前の公爵令嬢で、試練が呪いと呼ばれるようになった元凶だったりする。ただし、本人に一切の悪気はない。
彼女は婚約者となり10年近く、試練のはずが全く消すことが出来ず、その呪いと共に生活していた。
ピコン、ピコン。
(ふふっ。今日は、可愛い音が鳴るのね)
一歩一歩、ロメリアが歩くと音が鳴るという呪いだ。その日によって、音色が変わる。
昨日は、チューとネズミの鳴き声のような音がしていて、授業中にあてられ黒板まで行き来する間、歩くたび、鳴いた。難しい問題にも、難なく正解出来たというのに効果音一つで台無しだ。
とても聡明な女性なのに授業を一緒に受けている者も、教える先生も、街の人たちからも、みんなに呪いだと思われて、婚約者としては不十分ではないか?とさえ思われ始めている。そう思われても仕方がないほど、試練は何も変わっていなかった。
周りは笑うに笑えないその呪いを持つ、ロメリアに付き合わされていた。微妙な空気になるのは、いつものことで本人は慣れたもので大して気にしていなかった。
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