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2、婚約破棄と試練からの開放
しおりを挟む可愛らしい音がするだけの状態で、ロメリアは10年近く、普通に生活していた。
最初こそ、しばらく戸惑っていたが、順応性の高い彼女は、すぐに慣れた。音に大してイライラする日がなかったわけではないが、それでも返すことは一度としてなかった。そのおかげでかなりメンタルも強くなり、逞しくもなった。
この音に先に根をあげたのは、掛けられた本人ではなかった。
「君との婚約を破棄させてくれ」
王太子のバンダカは、子供騙しな呪いに対して、10年近くも何の進展も見られないロメリアにたえられなくなっていた。
その横には、新しい婚約者となる令嬢が寄り添うように立っていた。子爵令嬢で、リンベルという名前だ。何かとロメリアと張り合ってきていた令嬢で勝ち誇った顔をロメリアへと向けていた。
「新しい婚約者となるリンベルだ。彼女なら、そんな呪いなど簡単に蹴散らせる」
「ロメリア様ともあろう方が、そんな子供騙しの呪いすら返せないことに驚きですわ。私でしたら、その程度の呪いなんて、そもそも寄せ付けたりしませんわ」
(蹴散らせる? 返す? この2人、妖精王からの試練を本気で、ただの呪いと同じだとは思ってないわよね?)
だが、婚約破棄を元々したかったロメリアは、そのことをあえて2人に確認を取ったりしなかった。
「わかりました。確かにリンベル様でしたら、簡単に解決してしまわれるでしょうね。私より、優秀ですもの」
「あら、やっと認める気になられたのね。安心して、私が完璧な王太子殿下の婚約者としてのあり方を見せてあげるわ」
そんな、やり取りのあった後で、あっさりと婚約者が変わった。あの呪いとしか言いようのない試練に全く変化がないことから、私たちの相性がよくないと思われたのが大きかった。破棄が成立して、あの音からロメリアは解放された。足をついても、あの可愛らしい音がしない。
(なくなるとちょっと寂しいと思える日がくるとは思わなかったわ)
ロメリアの家族や友達は、呪いのような試練から開放されたことを喜んでくれたが、本人がまさか寂しく思っているとは知りもしなかった。
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