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しおりを挟むヴィディヤは、トリシュナによって捻挫した後、サントスと婚約した王女とは意気投合した。
「凄く仲が良いですね」
「……そうだな」
「? どうかされましたか?」
「いや、ちょっと気になってな」
「何がですか?」
「いや、何でもない」
「??」
王太子は、従兄の婚約者と仲良くするヴィディヤを見てにこにことしていたが、サントスがじーっと見つめているのを不思議そうにした。
彼が気になっていたのは、どちらが怒らせると怖いかだったりする。王女と婚約する気になったのも、怒らせたら怖かったからだ。
流石に王太子である従弟の婚約者を取り上げられないと留学した先にはっきり物申す王女がいたのだ。
ヴィディヤのような令嬢はいないと思っていたら、この王女がいたのだ。口説き倒して、ようやく婚約することになった。
サントスのそんな内心に気づいたのは、ヴィディヤの従兄のラジェンドラだ。
「お前、馬鹿なことするなよ」
「……」
「するなよ」
「お前は、どっちだと思う?」
「んなの知りたくない」
「つまんねぇーな」
「つまらなくていい。お前は、その性格を直せ。愛卒化されるぞ」
だが、サントスは悪友であるラジェンドラが忠告したというのが気になって仕方がなかったようだ。いつも、止めても聞かないのだが、流石にやらないとラジェンドラは思っていたことをやったのだ。
全くこりていなかったようだ。盛大に怒らせて謝罪したが、それで終わらなかったのだ。
「謝罪したのに破棄するのか?」
「謝って許すか、許さないかを決めるのは、あなたではないわ。大体、怒らせたら、どちらが怖いかでわざと怒らせるような方と婚約なんてしていたくない。そんな男、こっちから願い下げよ!」
「っ、」
サントスは、怖いもの知らずだが、婚約者は自分を好いているから何をしても、許してくれるものと思っていた。
だが、そんなことはなかった。口説き倒したと思っていたが、そこまで好かれていなかったようだ。わざとやったことに対するツケを払うことになったのだ。
それこそ、王弟である父がいなければ、彼はとっくに王女のように色んな方面の令嬢たちから、言われていたはずだった。それを言われずにここまで来ていたのを思い知ることになったようなものだった。
何を言っても、許してはもらえないことを通り越した。王女との婚約を破棄することになるのも、すぐのことだった。
そして、ヴィディヤどころか。従弟の王太子も、激怒してしまいサントスは、必要最低限の会話しか、ヴィディヤたちとできなくなった。それを後悔しても、あとの祭りでしかない。
「尊敬していたのに。あんな方だったとは思わなかった」
「……」
散々からかわれていたが、王太子はその辺のことに気づいていなかったし、そのことで怒ることはなかった。
そんな王太子にヴィディヤは、何とも言えない顔をしてしまったが、そこがたまらなく愛おしく思えてならなかった。
彼は、自分のことより、他人のことで怒るのだ。彼が大事にしていたりする者には、特にだ。
王女のことも気に入っていて、従兄が無礼なことをしたことが許せなかったようだ。
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