訳あり少女は、転生先でも散々な目に合う道を自ら選び続けて、みんなの幸せを願わずにはいられない性分のようです

珠宮さくら

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まぁ何はともあれ、両親がアンジェリーカと王子を婚約させたかったのは、子供たちのことを一番に考えてのことではなかったことは明らかだった。

どうやら、そんな王子と婚約させたのも、色々と賄賂を貰ってのことのようだ。

両親や親戚の懐が潤うばかりとなっているようで、アンジェリーカは知りたくもないことを知ることになって、げんなりしてしまっていた。

何よりカロージェロのやりたい放題に振り回されていて、どうにかできるものなら、どうにかしたいとずっと思っていた。

そんな願いと想いが叶ったかのようにアンジェリーカは、理想としている先生に巡り会えたのだ。

カロージェロは前々から頭がよくないを通り越して馬鹿だと思っていたが、アンジェリーカがやっている勉強の進み具合にあからさまに動揺を見せて、ムッとした顔をしたのは、すぐだった。


「婚約したからには、婚約者を立てろ。学園に入ってからは、気をつけろよな。婚約者より成績がいいなんて、出過ぎた真似をするなんてあり得ないぞ」
「……」


(この人、何言ってるの……?)


そんなことを言われて絶句してしまった。何とも言えない顔をしてカロージェロを見ていたが、彼は気づいていないようだ。それも、いつものことだが。

王子の側にいる護衛騎士たちをチラッと見るとアンジェリーカとは誰一人として目を合わそうとはしなかった。目が合いそうもないため、アンジェリーカはそちらを見るのを諦めた。彼らに変な期待をしてはいけない。いざという時には、王子の方を優先しなくてはならない人たちなのだから。アンジェリーカのために動いていては、ここに来るのを外されるのは間違いないだろう。


(それって、他に偉い要素がないってことよね? まぁ、子供だから今は許されるだろうけど、このまま成長するようなら、残念すぎる男になるのは確定でしょうね。これ以上に残念にならないといいけど、無理そうよね)


アンジェリーカは、そんなことを思って呆れ返った顔をしていた。もはや何を言っても、無駄にすら思えていた。


「お言葉ですが、殿下。アンジェリーカ様は、祝福もさることながら、魔力も桁外れな方なのですよ? 学園でも常に一番で有り続けられることを望まれておられる。ですから、こうして日頃から勉強をしているのです。それを抑えろと言うとは驚きです。むしろ、自分のことはいいから、周りの期待に応えろと言うところなのではありませんか?」
「は? 婚約者より上で有り続けることに耐えろというのか?!」
「殿下。それは、あなたにも言えることですよ。学園で上位に位置しないなんて、唯一の王子としては問題だと思いますが」
「貴様、黙って聞いていればよくも……」
「先生。殿下は、ご自分の成績は気にはなさらないのよ」
「っ、」
「じゃなきゃ、こんなに暇を持て余して、ここになんて来ていられはしないはずだもの。学園に入るまでに完璧にしておかなければいけないことが、私より多くて忙しすぎるはずだもの」


そんなことを言うアンジェリーカにカロージェロは激怒していたが、勉強の邪魔だからと追い出したのは、すぐだった。

そんなことをしても、王子が誰にこの時のことを言っても、アンジェリーカだけでなくて、家庭教師の先生が解雇される事態にはなることはなかった。

そんなことをしたら、アンジェリーカが黙ってはいなかったが、そうはならなかったのだ。

怒り狂いながら、プンスカと出て行く王子を見送ってから、アンジェリーカは……。

 
「先生」
「?」
「私、教えを請いたいと心から思った方は初めてです」
「……それは、生徒に言われて嬉しい言葉ですが、まだ授業すら始まっていませんので、だいぶ早いかと」
「ふふっ。そうですね。早すぎますね」


アンジェリーカは、楽しくなってしまって笑ってしまったが、そんな風に笑うことも珍しいことだった。

彼は早すぎると言うが、言わせるようなことをする気なのが、よくわかって嬉しくて仕方がなかった。

それがわかってアンジェリーカは楽しくて仕方がなくなっていた。こんなにワクワクするのは、この世界に来て初めてかも知れない。


「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。エジェオ・オルドイーニと言います」
「アンジェリーカ・グラッツィアーニです。これから、よろしくお願いします。オルドイーニ先生」
「エジェオで構いませんよ」
「では、エジェオ先生と呼ばせてもらいます」


名前を聞いて、アンジェリーカがにっこりと笑いながら、誰かの名前を口にしたのも、この先生で今世では2人目だった。

そして、よく笑うようになったのも、この時からだった。

少しずつ動き出したかのように見えたが、それはほんの少しだけの変化でしかなかった。アンジェリーカは、そんなことで満足している場合ではなかったのだが、そのことに全く気づいていなかった。


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