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しおりを挟むあれから、アンジェリーカは何度もやり直していた。エルフに救世の乙女と言われて助けを求められるたびにこう言うことにした。
「エルフは人間に助けられたくないのですよね? 本来いるべき世界にお戻りになられては、どうですか? 数百年に一度危機に見舞われるのも、それが原因のようですよ。合わない世界にいるよりもいいと思います。元の世界に帰る手助けはしますが意地でも残るなら、ご自分たちでどうにかなさってください」
「っ、」
メンフィスは、そんなことを言われると思っていないこともあり、毎回アンジェリーカの言葉に激怒して怒り心頭で帰って行くようになっていた。
何度も繰り返すうちにアンジェリーカの家庭教師はエジェオではなくなっていたため、いつのまにか彼はアンジェリーカのところにメンフィスと一緒に来なくなっていた。
(エルフの王子を怒らせたいわけではないけれど、あの王子を見ているとこの国の王子がまだ、マシに見えるようになったわ。本当に不思議なものね。ここまで、中身が残念だったのに気付けなかったなんて、本当に見る目がなかったわ。1番最初に現れた時は、プライドをかなぐり捨ててまで助けを求めに来てくれたと思っていたのだけど、段々と酷くなる一方なのよね。人間に私が肩入れすればするほど、エルフのみんなには嫌われる一方になってるし)
そこまでになって、アンジェリーカは着実に人間たちを改心させて、天国行きを増やしていくことになっていた。
その中にエルフは、やはりいなかった。彼らは、輪廻転生する魂ではないようだ。長い寿命を終えたら消える存在が、エルフのようだ。
(死んだら終わりの魂って、こんなにも虚しく見えるものなのね)
エルフ族には申し訳ないが、アンジェリーカはここが合わないせいで辛い思いをし続けるよりも、元の世界に戻る方がいいと思っていた。
ユヴェーレンに居続けても、自分たちさえよければそれでいいのだ。アンジェリーカのような祝福と魔力を持つ者が次もいるとは限らないのだ。特に元の世界に戻せる人間が、これから先、ポンと現れる可能性は限りなく低いはずだ。
それならば、アンジェリーカができるうちに全員に戻ってほしいと思うのは、そんなに間違ってはいないはずだ。アンジェリーカなりにできることをしようとしているのは確かだ。
エルフを見放すつもりは、アンジェリーカにはなかった。完全に見放すつもりでいたなら、エルフたちを根気よくここよりも生きやすいところに帰そうなんてしてはいない。
そのたび、メンフィスに散々なことを言われることが増えていったが、アンジェリーカはそれは仕方がないと思っていた。
そんなことをせずに救世の乙女だと頼りに来ないやうにすることは、アンジェリーカには容易いことだったが、それをしないでいたのは、エルフを見捨てられなかったからに他ならない。でも、そんな思いをアンジェリーカが持っていても、エルフの全員に伝わることはなかった。
アンジェリーカは、エルフの面倒を見ながら、人間をみんな天国行きにするために奮闘し続けた。
人間の方で徐々にアンジェリーカのこと。認めてくれて好かれていくのに反比例するようにエルフたち、特にメンフィスに物凄く嫌われていくことになったが、それでもアンジェリーカはやりたいことをやめることはなかった。
少しずつ、少しずつアンジェリーカはやり直すたびに魂をすり減らしていっていて疲労困憊となっていたが、それでもアンジェリーカの周りの人間が祝福を神から与えられた贈り物を宝物のように大事にして、祝福と魔力を世の中をよくするために使う人たちばかりとなっていくのを微笑んで見ていた。
祝福の自慢をするのではなくて、相手の祝福を褒めて認めていく人たちばかりとなって、本音と建前が違うようなこともなく、善人ばかりの世界となっていくのを見てアンジェリーカは、嬉しくてたまらなかった。
そして、真逆な方向へと突き進むエルフたちが、段々と人間の中でもアンジェリーカが最低最悪な女となっていくのを見て見ぬふりをするようになった。
あと少し、あと少しで、人間全員が天国行きになる。それが成されることを夢みつつ、アンジェリーカは最後の力を振り絞ることにした。
(やっと、やっと、みんなを天国行きにできる)
アンジェリーカは、嬉しくてたまらなかった。大はしゃぎしたいのに身体が重苦しくて、儚く笑うことがやっととなっていた。
アンジェリーカがやり直し始めて、どのくらいの歳月が経っていたか。それを知っているのは、神様だけとなっていた。
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