高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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一学期の期末試験は、中々良かった。夏休みを満喫する気でいたから、補習になるわけにもいかないと中間試験よりも更に頑張ったかいはあった。


「蓮も見頃だな」


久々に花を見たくなって、遠出をした僕は丁度見頃な蓮を見て和んでいた。ここまで、足を伸ばしたかいがある。そして、試験を頑張ったかいがある。

すると気に覚えのある声が耳に届いた。その声に不自然に身体がビクついてしまったのは、仕方がないと思う。


「蓮が見事ですね」
「そうだな。今日、来て正解だったな」


なぜだ。なぜ、ここにいるんだと思いながら、頭を抱えたくなってしまった。きっと思っている人とは違うと僕は思いたかった。

そちらを確認せずに移動すればいいものを怖いもの見たさというべきか。ついつい、そちらを見てしまった。

あの、幸せそうな二人がいた。あいかわらず、お似合いですね。手をしっかり握りあっていて、私服姿も完璧で目に焼き付くほど、絵になっていた。

うわっ、ムカつくくらい絵になるな。イケメンって、こういう時、得だよな。カノジョも、美少女だし。

二人を見て、特に男子を見てから僕は自分の私服を見た。カノジョもいたことない僕と勝ち組な男子を比べたのが間違いだった。

誰かと待ち合わせしているわけでもなく、気合なんて全くいれてない私服に見えるが、遠出するのにそれなりに頑張った結果なんだが。もはや、適当に選んだと言い逃れた方がセンスうんねんで精神的なダメージを受けない気がする。

なんか、既に帰りたくなってきてしまった。いたたまれない気持ちになった僕は、ため息をつきたくなっていた。花を愛でに来て、こんな気持ちになるのは何度目だろうか。

だが、そんなことでおめおめ帰れない。帰ったら、更に負けた気分になると奮起することになった。ここで、やる気になるのも変なのかも知れないが。

そして、ふと鬼の形相をしていたストーカーを探してしまっていた。だが、期末試験の結果が悪かったのか。風紀の先生に捕まって注意されたのか。ここに来るのを知らないだけか。怖い顔をした女子を見つけることはできなかった。

それに僕は、心からホッとしてしまった。男の方にはリア充爆発しろと思っているが、お嬢様の方があまりにも幸せそうにしているのを見ていて、彼女が悲しい思いをすることがない方がいいに決まっていると思うようになっていた。

それだけ、いい子に見えてならなかったのだ。彼が、僕の好きな人より選んだのは、わからなくはない女の子だった。

だが、僕の好きな人は変わらず、振られたこと以上に二股をしている最低男だと思ったままなようだ。

流石に勘違いしたままの僕の好きな女の子は、ここには来ていないようだ。それにホッとしていいのか。勘違いしていることにいい加減、気づいてほしいような複雑な思いを抱いていた。

そんな二人のうち彼女の方がお手洗いに行ったようだ。

僕は、いつまでも花でなくて二人を観察しているのも、変だと思い自販機で飲み物を買うことにした。

すると一人になった途端、声をかけられていた。


「すみません。ここって、どう行くかわかりますか?」
「えっと、ここは……」


やはり、モテる男はこういう風に声をかけられやすいようだ。羨ましいなんて思わない。年上のお姉さんが美人なことに妬ましい思いを持たなかったといえば嘘になるが。


「うわ~、蓮、綺麗!」
「本当だね」


そこに聞き間違えるはずもない声がした。すぐに僕はその声のする方を見た。僕の好きな人が、そこに複数の女の子といた。

このタイミングなのかと僕は思ってしまった。


「あ、ちょっ、あれ」
「え?」


友達が先に気づいてつられて、見た方向には道を尋ねられている男がいた。


「うわっ、あれ、どう見ても大学生くらいだよね?」
「……そうだね」
「守備範囲、広いわね」
「え? 何々?」
「もしかして、例の二股男?」


道を聞かれていただけなのに二股男から、更に浮気している男となったのは言うまでもない。

僕は、それを耳にしながら本命はトイレに行っているだけだと思わずにはいられなかった。本命に早く戻ってきてくれと願わずにはいられなかった。

結局、ミラクルな行き違いによって、本命としっかりデートを楽しむ束の間に浮気相手と同じ場所で過ごす、最低男にまでなっていた。

僕は、ずっと見ていたが、本命と来てちょっと離れた間に困っている人を助けていたに過ぎないのだが、僕の好きな女の子とその友達は、一部しか見ていないだけで蓮を楽しむどころではなくなって、美味しいものでも食べに行こうと移動してしまっていた。

僕も、お腹が空いてきたなと移動を始めたが、そこでは知ってる人がいなくてゆっくりできた。


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