高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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夏休みの間、僕は花屋でバイトすることになっていた。花好きな僕には涼しくて、いきいきとした花を見ていられる場所で働ける上にバイト代ももらえるのだ。こんなに嬉しいことはない。

そこは、僕の叔母が経営しているところで、高校生になったら、バイトしに来てくれると助かると言われていた。だが、離れたところにあるせいで、学校がある時は通うのが難しかった。

そのため、長期休暇の時に通おうとしたら、行き来も大変だろうからと叔母夫妻のところに泊めてもらえることになった。それは、物凄く助かることだった。

まぁ、その方が交通費の節約にもなって良かったのかも知れない。ついでに従弟妹たちの夏休みの宿題を見ることになって、物凄く喜ばれていた。

そのうち、従弟妹たちだけでなくて、その友達までも勉強を見てくれと集まって来て、僕は何かと忙しくしていた。

まぁ、夏休みに世のお母さん方がくたくたになるのはわかる。小さな怪獣たちの集まりだ。だが、ルールをみんなで決めた。どうしたら、仲良くできるかを決めたのだ。そして問題が持ち上がるたびにどうしたらいいかをみんなで考えたことで、小さな怪獣たちは学年関係なく、仲良くなっていた。その上、面倒見も良くなったのは、いい傾向だ。


「花屋だけでなくて、あの子たちの面倒まで見てもらって、ごめんね」
「いえ、僕こそ、夏中、お世話になり放しで申し訳ないです」
「そんなのいいのよ! 凄くよく働いてくれたし、あの子たちだけでなくて、他の子たちの面倒まで見てくれて、ママ友たちも今年も喜んでたわ」
「……」


これは、去年からの恒例になってしまっていた。

それこそ、ずっと叔母の家で勉強会をしていたら、色々と大変だろうと持ち回りにして、僕がお邪魔することになったのだ。

最初は、相手のお宅で叔母のママ友が一緒にいたが、その間を面倒見ている間に買い物やら、ちょっとした昼寝をしたりしてもらったのだ。

それが、いい気分転換になったようだ。何なら、赤ちゃんの世話までもしていて、小さな保育園のようなことになっていた。預けっぱなしの人とは、付き合いを改めた。僕は従弟妹たちを見るついでにやっているだけで、ついでの延長を勝手に伸ばされても困るだけだ。

そんなママさんは、他の子を見れて、私の子は見れないのかと怒ったりもしたが、きっぱりと見れないと断った。すると更に送り出したが、子供の方がルールを守らないママが悪いと言い、ママが守らないと僕がみんなと遊べないと言い出したのだ。

うん。しっかり考えて話せるようになっているな。

そんなこんなで、我が子から言われた言葉は胸に刺さったようで、ママさんは反省したようだ。

時折、休みのパパさんたちもまじったが、小さな怪獣たちが暴れまわるでもなく、きちんとしているのにポカンとしていた。

多分、僕一人では大変だろうと思って手を貸してくれようとしたのだろうが、逆に子供たちにルールを教わり、色々と教わることになったようだ。


「君、凄いな」
「え? ルールを考えたのは、子供たちですよ」
「いや、凄いよ」
「……」
「兄弟いるんだろ?」
「いえ、一人っ子です」
「え?」


従弟妹たちがいるからと続ければ、ホッとした顔をされた。どうやら、一人っ子で色んな子供と楽しくできるのは珍しいようだ。

そういえば、僕が保育園に通っていた時も園長先生に驚かれたっけ。僕がいるとやりたかったことが、全部できていると喜ばれたっけ。そういう教育をしたくて保育園を開いたらしいが、上手くいかずに四苦八苦していたら、僕が入園して瞬く間に思い描いた保育園になったらしい。

そんなつもりで通っていたわけではないんだけどな。

そんな保育園児だったのが役に立っているようだ。僕としては、どうしたらやり過ごせるかを考えたに過ぎないのだが。

勉強だけでなくて、ゲームをしたりした。テレビゲームでなくて、手作りのすごろくをみんなで作って遊んだのだ。学年も、男女も関係なく、遊べるものを考えるのも面白かった。

手作りなこともあり、毎回ランダムに変わることで、何度やっても面白いようにして正解だったようだ。チームわけをしたり、個人戦にしてみたりと子供たちも、ルールを自分たちで1から作って遊ぶのが、面白かったようだ。

それが終わって、外で遊ぶとなると僕はバイトに向かうことになって、叔母のママ友と交代した。


「夏休みの宿題は、終わったの?」
「まぁ、大体は」
「そう。流石ね」


夏休みの宿題は、毎日コツコツやっているのと夏休みに入る前に終わらせたものもあったが、その辺は内緒だ。

一人っ子の僕は、従弟妹たちとこうして遊ぶことで、一人っ子には全く思われていなかったりする。

そんなにお兄ちゃん感が出ているものなのかと苦笑することはよくあったが、ここに来て益々増したとは思っていない。

だが、にじみ出るお兄ちゃん感はあるようだ。夏休みが終わるからと集まりも終わるとわかると泣かれたのだ。

それだけ懐かれたようで、まさか泣かれるとは思っていなくて大変だった。それにつられて従弟妹たちも泣いてしまい、叔母はそれに呆れていた。


「他の子はともかく、凪が従兄なことを忘れてるわね」
「でも、それを言うと狡いの大合唱になりかねないでしょ」
「確かにそうね。それにしても、懐かれたものね」
「懐かれたのは嬉しいけど、泣かれるのは困るよ」


僕は、苦笑せずにはいられなかった。去年は泣かれなかったのに何で今年は泣かれるんだろうか。

子供は不思議でならない。……僕も、まだ子供の分類だが、気分は保父さんだった。おかしいな。花屋のバイトがメインだったはずなのに。


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