高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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「定休日の次は、臨時休業」
「……」
「私、呪われてる気がしてきたわ」


バスに乗ってやって来たが、臨時休業と書かれているのを見つけてしまい、3人はその場に立ち尽くしてしまった。

まずい。フォローの言葉も思いつかない。それこそ、今日買えないどころの問題ではないかも知れない。

買えないとまずい状況なのを聞いていたこともあり、他人事ではなく焦り始める自分がいた。

頑張ってるのにそれ以前なことに出くわしてしまえば、高校生は詰んでしまう。

どうする? 部長と顧問に連絡して、どうにか車出してもらうか? いや、でも、ここからだと知ってるとこは遠目なとこばかりになるし……。


「あれ? 凪? そんなとこで、どうしたの?」
「あ、叔母さん。こんにちは」


は?! そこに叔母の声が聞こえて、僕は驚きながらも、救世主に見えた。


「あ、もしかして、あなたたちも、ここの臨時休業で困ってた? 私もよ」
「臨時休業って、そんなに急な感じ?」
「空調がおかしくなって、夜中ずっと常夏みたいになって植物がほぼ全滅したらしいわ」


想像しただけで、恐ろしくなった。全滅って、植物が可哀想すぎる。


「それは、臨時休業しますね。そうなるとしばらくは営業しない感じですかね?」
「うん。なんか、一ヶ月は短くても休むって、長いともっとかな。空調を直さないと同じこと繰り返して再開しても困るし」
「そうですよね」


それを聞いて、園芸部二人は困り果ててしまった。手伝い要員の僕もだ。

絶望した顔を見かねた叔母に僕は説明することになった。


「なるほどね。ちなみに必要な物って、どんなの?」


副部長がイラストを広げて説明をし始めた。僕の叔母というのもあってか。人見知りなのがよくなっているのか。こんなことになって、藁にも縋る思いなのかはわからないが、見事なプレゼンだった。

それは、期待値があがる。完成を見たくなる。

ちらっと見れば、叔母は目を輝かせていた。

釣れたな。

そんなことを思ってしまった。その気になった叔母は強いのだ。最強の味方を得たと僕はその顔で確信していた。


「素敵ね! そっか。わかったわ。私の後輩たちのピンチだもの。車、出すわ。それが買えそうなところ、心当たりがあるから回りましょ」
「え? 後輩??」
「叔母さん、花屋やってて、あの高校の園芸部の部長やってたんだよ。ほら、これまで、歴代一番だった年の部長」
「「っ!?」」


そう言うと叔母は、じとりと僕を見た。

あ、やばい。


「これまでね。まさか、助っ人要員の甥っ子に負けるとは思わなかったわ」
「何、それ。僕は、アイディア出しただけで、販売を頑張ったのも園芸部だよ」
「そんなことないです! あれは、素晴らしかったです!」
「うんうん。凪くん、あってこそだよ」
「ほら~」


僕は、女子に力説され、叔母にニヤニヤされて何とも言えない顔をしてしまった。

確かにテンションあがって、押し花で作ったやつを一緒に販売してもらった。瞬く間に売れたと知って、内心でガッツポーズしてしまったのは内緒だ。

その後、叔母が情報を集めてくれてツテを使って買い出しを手伝ってくれたおかげもあって、予算より安く買えた。

何気に園芸部のファンが多かったようで、応援してくれて、安くしてくれたのだ。

植物好きはいい人ばかりだな。


「本当にありがとうございました!」
「いいのよ。今年も、期待してるわ。頑張ってね」


叔母のことは、副部長から顧問に連絡がいったらしく、学校につくと凄かった。


「叔母さん、今日は本当にありがとう」
「どういたしまして。それにしても、凪の交友関係は花に関係する子ばっかりみたいね」
「いや、そんなことないよ。叔母さんの交友関係には負けるよ」
「そりゃ、年数が違うもの。でも、凪にはあっという間に越されそうだわ」


僕は、普通にそれなりに友達いると思っているが、最近は確かに花関連の友達の方が多いかも知れないと思ってしまっていた。

まぁ、なにはともあれ園芸部の作品も、これからだとしても何とかなるだろう。それに我が事のようにホッとしていた。


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