高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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「そういえば、去年の夏休みにプリザーブドフラワー作った男の子、たまにミニブーケを買ってくのよ」
「そうなんだ」


また、お母さんが夏バテでも起こしたのかな。身体が丈夫ではないのかも知れない。今年の夏は去年よりも暑かったから、入院している方がいいかも知れない。夏場に庭で倒れでもしていたら大変だ。ガーデニング好きなら、無理をして花の世話をしてしまいかねない。

でも、夏休みが終わってからだとしたら、倒れた後かも知れないが。

佳都くん、どうしてるんだろ。


「そのたび、凪のこと探してたみたいで、去年の夏にバイトの子はいつのシフトかって聞かれたから、長期休暇の助っ人だって夏休みが終わったからバイトには来てないって答えておいたわ」
「僕を? 探す理由なんて、何も思いつかないけど」


そもそも、去年の夏以降では、一方的にカノジョさんといるのを見かけたり、僕の好きな子に勘違いされているのをちらっと見たりするくらいだった。

あれだけ、勘違いされる場面を目撃し続ける自分の遭遇率に遠い目をしてしまった。

向こうは、幸せいっぱいにしていて、僕にもストーカーの方にも全く気づいていないようで、それにもびっくりだったが。


「プリザーブドフラワーをまた作りたいみたいよ。今度は、カノジョさんの誕生日プレゼントみたい」
「……」


それを聞いて、無になった僕は悪くないはずだ。

まだ、付き合っていたのか。まぁ、あれだけお似合いで幸せそうなんだから、別れているわけはないか。そうだよな。

でも、去年はカノジョさんへのプレゼントうんねんにはならなかったのは、もしかして誕生日知らないで過ぎちゃったとか……?

いや、イケメンくんがそんなヘマするわけがないか。


「何、その顔」
「いや、カノジョさんのこと見かけたことあるから」
「あら、そうなの。……もしかして、その子のことが好きなの?」
「まさか。凄いお嬢様で、僕とは釣り合わないよ」


僕は、カノジョのことより、ミニブーケを買いに立ち寄る佳都くんのことが気になってしまった。

それが、入院中の母親へのお見舞いの品だとしたら、入院が癖になっているのも、問題だ。

病気でも見つかったのかな? 早く良くなるといいな。


「それで、凪さえよければ、プリザーブドフラワー手伝ってあげてくれない?」
「……」
「今日は、金曜だから土日に来そうなのよね」
「……つまり、僕にこのまま叔母さんのところに泊まりに来ないかって言ってるの?」
「あたり」


僕は、世話になっていることもあり、叔母の申し出を断れなかった。

夏風邪を引く羽目になった花屋に臨時のバイトで入ることになったのだ。まぁ、いいんだけど。


「兄ちゃんだ!」
「凪にぃにだ!」


従弟妹たちは、僕を見て大はしゃぎしてくれた。嬉しい限りだ。


「父さんと風呂、入ろうか」
「やだ。兄ちゃんと入る!」
「にぃにがいい!」
「……」


叔父がしょげてしまい、それを見て爆笑する叔母。僕は、どんなリアクションをするのが正解なのかがわからなかった。

夏休みも、こんなだったな。この家は平和だ。






まぁ、そんなこともあって、臨時のバイトに入って花屋にいると佳都くんがやって来た。


「あ、え? 何で??」
「どうも。週末、暇だったんで、臨時でバイトいれたんです。お久しぶりです」
「あ、お久しぶりです。あ、もしかして、その、わざわざ?」
「いえ、本当に暇だったのと昨日、店長に借りを作ってしまって」


佳都くんのためではない。ましてや、カノジョのためではない。そうだ。僕は叔母に借りを作ってしまったのだから返すためにここにいるんだと念じながら、彼に話した。


「そんなことが」
「あったんですよ。流石に定休日じゃない日に臨時休業だと現実逃避したくなりました。いや、僕より部活の方々のショックが、酷かったんですけど」


それを想像したのか。佳都くんは凄く辛そうな顔をしていた。

昨日の僕は、どんな顔をしてあそこに立ち尽くしていたんだろうか。園芸部の2人に比べたら、大したことないように見せて、途方に暮れていた気がする。

何より植物が管理が上手くいかずに枯れることになったことに心が痛くてならなかった。


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