高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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遅れた昼食を取った僕は、クラスの方にむかった。そう、ただ普通に歩いていただけで、声をかけられたのだ。


「あれ? 凪くん?」
「え?」


そこに佳都くんが、カノジョといた。

マジか。

このタイミングで会うのかと思わず逃げたくなったが、何とか耐えた。勢いのままたくさん食べて走れる余力がなかったのもある。食いすぎた。


「あ、佳都くん。こんにちは。来てくれてたんですね」
「ここの園芸部の作品をカノジョが毎年楽しみにしてるらしくて、あ、紹介するよ」


いや、結構です。

そう言葉にできたら、どんなによかったか。僕は、好きな女の子の名前よりも、佳都くんの次に知ることになったのは、そのカノジョの名前だった。


「初めまして、神宮寺琴葉と申します」
「初めまして、伊東凪です。園芸部には、これからですか?」
「いえ、初日に来たんです」
「え? そうなの?」


ん? なぜ、そこで佳都くんの方が驚くんだ?? 一緒に行ったのではないのか?

僕は、目をパチクリしてしまった。

イケメンくんも、同じようにしていた。


「ごめんなさい。園芸部の作品は、初日の早い時間でないといい作品がないかと思って」
「あー、そっか。昨日は、俺が都合悪かったから」
「……」


いや、そんなことはない。むしろ、2日目に人が来るから、今日の方が気合い入ったのを売ってたりする。

まぁ、そこは言わなくともいいか。

2日連続で、文化祭に来てくれているお嬢様に凪はちょっと、いや、かなり感激していた。


「あー、なら、僕のクラスに寄って来ません? 喫茶店やってるんですけど」
「喫茶店。どうする?」
「お伺いしたいです」


そんなこんなで、成り行きでクラスまで一緒になってしまった。

それこそ、これから園芸部の方に行って、昨日と違う作品が置いてあるのを見たら、大変な気がしたのだ。


「美味しい」
「お口にあってよかったです」


紅茶を飲んだ琴葉さんは、驚いた顔をしていた。

あまり期待してはいなかったのだろう。無理もないが。お嬢様だもんな。違いがわかって当たり前だ。


「凪さんが、淹れられたんですか?」
「うん。こっちは、サービス。僕の作ったクッキー」
「え? これを?」
「花のモチーフのものを考えるのが好きなんだ。ケーキは、丁度、売り切れてて、もうちょっとしたら、届くんだけど。今は、これくらいしかなくて、申し訳ない」


まさか、好評になって出せるものが大変なことになっているとは思わなかった。昨日は、トラブルはなかったのに。


「本当に花が好きなんだな」
「まぁね。ごゆっくり」


カップルの邪魔は、これ以上できない。

というか。もう既に僕はいっぱいいっぱいだ。お腹もいっぱいだし。眠たい。

なのに僕が好きな女の子が、友達とやって来ていたようで、僕は運命を呪いたくなった。

なぜ、僕の周りに集まって来るんだ。


「げっ、」
「あ、」
「どうする?」
「あー」
「すみません。ケーキが、売り切れてしまっていて、もう少しあとから来ていただけるとお出しできるんですが」
「え、そうなんですか? なら、ケーキ食べたいんで、他を回ってから来ます。ね?」
「あ、うん」
「すみません。あ、これ、どうぞ。わざわざ、来ていただいたのに申し訳ないんで、これ、使ってください。見せてもらえれば、お持ち帰り用のお菓子、サービスするんで」
「ありがとうございます! わっ! 凄い! 可愛い!!」
「あー、でも、こっちも、人気なんで、サービスする分、取り置きしときますよ。どれにします?」
「それなら、これで!」
「はい。そちらの方は、どうします?」
「えっと」
「ほら、せっかくなんだから、選んどきなよ」
「あー、でも、これなら、来れなかった子のお土産になるから、色々買いたいかも」
「あ、確かに」
「じゃあ、セットものに割引しましょうか?」
「いいんですか?」


そこで、2人から名前を聞き出せた。僕の好きな人の名前は、泉という名字だった。泉莉緒というらしい。友達が名前を呼んでいたから、そうなのだろう。

久々に会ったが、僕はまだ彼女のことが好きなようだ。

でも、前よりも恋い焦がれる何かがなくなった気がしてならない。


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