高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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「凪くん! ありがとう! 本当にありがとう!!」
「いえ、お役に立ててよかったです。って、うわ、鼻水つけないで」
「こら! これ以上、迷惑かけるな」
「うっ」


叔母さん。首締まってるよ。いや、うん、鼻水から逃げれたけど、なんか、年々情けなさに拍車がかかっていってないか?

叔父は、僕が莉緒さんに買って来てもらった御当地キャラクターで、子供たちに無視されなくなったようだ。

それに感激して、僕に泣きながら鼻水を垂らして抱きついて来ようとして、思わず本音が出てしまった。仕方がない。

あんな顔の野郎に抱きしめられたくない。


「ううっ」
「また、泣いてるの? ほら、お礼を渡すために来てもらったんでしょうが」
「あ、そうだった」
「……」


忘れてたんだな。そういうとこだぞ。叔父さん。どうして、これで営業でやり手なんだろうか。謎だ。

不思議なことは色々あるものだが、もはや理由がわからなすぎて謎でしかない。


「……これは?」
「植物園に新しくできたカフェテリアの無料券よ」
「あぁ、CMやってるやつか。無料券なんて、あるんですね」
「それと植物園の割引券。本当は、こっちも全部出したいんだけど。そうすると気を遣わせるでしょ?」
「確かに。これなら、映画一本より安いですね」
「流石ね」
「植物園は、何度行っても飽きないので」
「よくわかるわ。それと、そこにも御当地キャラクターの限定ものがあるらしいのよ」
「え? そうなんですか?」


知らなかった。何度か行ってるのに見過ごしたのかな?

植物園と聞いて、思わず眉を顰めてしまった。


「植物園が50周年の記念に発売になるみたいよ。だから、それ過ぎてからしか売ってないらしいわ」
「50周年記念」


それなら、見かけないはずだ。そうか。これから発売になるのか。知らなかった。


「そこで、お願いよ。凪、今度は私があの子たちに、買って来たことにしたいのよ」
「叔母さん、植物園ならよく行くんじゃないの?」
「あの子たちを預けたりして行くのも、一緒に行くのも大変なのよ。お願い、凪」
「……わかったよ。でも、混雑してたり、売り切れていたり、数量限定とかの場合は諦めてよね」
「わかってるわ。凪たちが、自分の分を確保するだけしかできない時は諦めるわ」
「……」


そこは、流石だな。

叔母さんと話すのは、好きだ。きちんと僕のことを考えてくれているからだ。子供のことも、そして、自分のことも。

そこに叔父さんがたまにしか入っていない割合も好きだ。


「わかった。従弟妹たちと叔母の分を買えるように頑張るよ」
「ありがとう!」


叔母は、嬉しそうにしていた。それを聞いて、叔父は驚いていた。

うん。そういうとこだよ。叔父さん。


「え? 君も、ハマったの?」
「まさか。でも、あの植物園の50周年記念の限定ものなら、ほしいわ。当たり前でしょ」
「あ、うん。そうだよね」
「……」


そういうところだと思うんだよな。叔母の花好きも中々だが、それをきちんと叔父は理解しきれていないようだ。

それこそ、わざわざ植物園にしたのも、僕が好きなものを選びつつ、話題のカフェテリアにして彼女を喜ばせつつ、どちらも共通の御当地キャラクターをゲットできる場面を作ったのだ。

流石としか言えない。まぁ、その血をより濃く受け継いでいるのが僕のようだから叔母も面白がっている気がしてならない。

それなのに僕より長くいるはずの叔父がこのポンコツっぷりなのだ。

どうして結婚したんだろう。そこが不思議でならないな。

僕の両親を見ていて、最近はしっくりきていることはあまりない。むしろ、喧嘩していることが増えたように思う。

叔母夫婦は、最初からしっくりこないことの方が多い。ちぐはぐに見えてならない。でも、僕の両親よりはマシなのかもしれないが。

まぁ、僕がしっくり来ようときまいと関係ないことは確かだ。あまり考えると自分の両親のことを考えずにはいられなくなってしまう。それは、今はしたくない。

さて、どうやって誘おうかな。

これだけお膳立てされて、出かけないわけには行かないが、一緒に出かけてくれるだろうか?


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