高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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「植物園って、こんなに混んでるものなんですか?」
「いや、僕、何度か来てるけど、初めてかも知れない」


植物園が賑わうのは嬉しいが、ゆっくりできないな。

僕は、莉緒さんを誘って植物園に来ていた。それこそ、叔母夫妻のことを全て話して、もらったものの話をした。お膳立てありきなことは伝えていない。

期末試験も終わり、冬になる前にと訪れたのもあいまって、この時期ならばと思っていた僕はげんなりしてしまった。

こんな混んでる植物園なんて、嬉しいはずなのに。デートでテンションあがるところのはずなのに。複雑すぎて、楽しめない。


「あ、」
「?」


莉緒さんが不意に何かを見つけて、そちらを見ると佳都くんとカノジョがいた。琴葉さんだ。

相変わらず、お似合いな2人だな。イケメンと美少女。絵にならないわけがないか。いや、でも、お嬢様をこんな混んでるところに連れて来るのは、どうなんだろうか。琴葉さん、顔色悪くないか?


「……」


莉緒さんは、未だに佳都くんのことを浮気男と思っているようだ。凄い顔をしている。その顔は、僕の好きな人の顔ではない。この顔は好きではない。こんな時にしてほしくなかった顔だ。

あれ? あの、鬼の形相な女子は、見覚えあるな。まだ、ストーカーしてたんだな。執念深いな。そして、それに全く気づいていないのも、凄いな。


「あ、ごめん。知り合い見つけたから、声かけて来る」
「え?」
「佳都くん、琴葉さん!」
「あら、凪さん、こんにちは」
「こんにちは。えへへ、デート中にごめん。知り合いを見つけて、つい嬉しくなって声をかけちゃった。相変わらず、仲良いね」


照れる2人は中々だった。だが、琴葉さんは僕の隣の莉緒さんを見てにっこりしたので紹介した。

佳都くんは、あれ?という顔をしていたが、僕はそんな彼に言っておくことがあった。


「あー、そうだ。佳都くん、ちょっといいかな?」
「?」
「あのさ。気のせいかも、知れないけど、君のこと物凄く睨んでる女子がいるんだけど、あ、ここが鏡みたいになってる。見えるかな? 凄い顔をして、見てる子がいるんだけど」
「? っ!?」
「知り合い?」
「あ、かなり前に告白されたけど断った子だと思う」


ですよね。僕も、見てたから知ってるよ。まだ、ストーカーしてるのにびっくりだし、気づいてなかったことに驚いてるよ。

かたやストーカー。かたや浮気男。

イケメンも大変だな。僕には一生わからない悩みだろう。


「気をつけた方がいいんじゃないかな。余計なお世話かも知れないけど」
「いや、うん。わかった。ありがとう」
「いえいえ、あ、カフェテリアには行った?」
「いや、この混みようで諦めてる」
「あー、莉緒さん」
「……何?」
「あのさ。無料券のやつ、4人までって、あるでしょ? この2人も一緒じゃ、駄目かな?」
「え?」
「無料券……?」


琴葉さんは、きょとんとしていた。佳都くんも、初めて聞いた顔をしていた。

あー、僕ってば何をしてるんだか。お節介にも程があるだろうに。

でも、ここまで来たら楽しんでもらいたい。植物園に来て、疲れたと思われたら二度と人が来ない。ここの素晴らしさを多くの人にわかってもらわなければ。

花好きの血が騒いだのだ。そういうことにしておこう。


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