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しおりを挟む冬休みも、僕は花屋のバイトに明け暮れていた。
母さんといても息がつまり始めていた。父さんも、同じようだ。父さんは、実家に行っていて、僕もあとから合流するが、母さんは自分の実家で正月を過ごすことにしたようだ。
まぁ、各々の実家で過ごすのもありだよな。
クリスマス用のアレンジが終わると正月飾りになって喜んでたけど、これも飽きたな。この時期の仕事は疲れるだけでなくて、しんどすぎるだろ。水仕事が辛すぎる。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
佳都くんがやって来た。その隣には琴葉さんがいた。
私服がレベル高すぎて、自分の私服のセンスのなさに泣けてくるな。
既に疲れ果てていて、テンションがおかしくなっていた。
「この間は、クリスマスパーティーにお招き頂いて、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、来てくださって、ありがとうございました。両親も、喜んでいました」
そうなのだ。琴葉さんに気に入られ、両親が気になったらしく、僕は莉緒さんと共にクリスマスパーティーに招かれてしまったのだ。
あんな華やかなパーティーに参加することになるとは思わなかった。
佳都も、パーティーに呼ばれていて、僕らが一緒なことにホッとしていたようだ。まぁわからなくはないが。
そんなところに呼ばれて、僕だって緊張していた。していたんだが、贅を尽くした花に目を輝かせてしまったのだ。
それで、花のことで琴葉さんのお母さんと意気投合してしまったのだ。
しかも、琴葉さんの誕生日のプレゼントのプリザーブドフラワーのアドバイスをしたのが僕とわかって、目の輝きが違ったかと思えば、見覚えのある押し花アートの妖精が明らかに高めの額に入れられて飾られていたのだ。
「え? 何で、僕の作ったのが、ここにあるんだ??」
どうやら、2年前の園芸部の文化祭の出し物を買ったのは、琴葉さんだったようだが、それをすっかり気に入ってのは、彼女の母親だったようだ。もちろん、父親も気に入ったらしく、額にいれて飾っていてくれたようだ。
「これ、あなたが作ったの?」
「えっと、はい」
「今年は、作品を作らなかったの?」
「え? いえ、あの、僕、そもそも園芸部員ではなくて、助っ人要員でして」
1から話すことになり、琴葉さんとその両親のみならず、その話を佳都くんと莉緒さんにまで聞かれることになった。
そこから、花屋でのバイトのことやら、プリザーブドフラワーのことを話したのは、佳都くんだった。
琴葉さんは、宝物のようにそれを持って来て、莉緒さんに見せていた。
彼氏が作ったから、大事にするのはわかるな。
「凄く綺麗」
うん。君の好きな人が一生懸命に作ったからね。わかるよ。
そんなことがあり、琴葉さんのお父さんに手招きされた。
「?」
「あの、プリザーブドフラワーは、私にも作れるものなのかな?」
「え? あ、はい。その、ご要望に合わせて、配置するだけで済むようにギリギリまで、お手伝いすることもできますし、全部をやりたいと言うならワンツーマンで完成まで、お手伝いします」
「そうか。その、来年、結婚20周年なんだが、妻が娘の誕生日プレゼントをえらく気に入っていてな。私も、記念にプレゼントとしたいと思ってるんだが、その何分、不器用でな」
「えっと、その、色々なことは、正式にご依頼いただいてからの方がいいかと。それにその、僕、長期休暇の間の臨時のバイトなんです」
「ふむ。バイト先では、講習を任されてるようだが?」
「あー、はい。ご指名をいただいたのと店長が許可してくれたので。えっと、あ、これが、僕のバイト先の名刺です。店長が、僕の叔母で帰ったら、今回のこと話しておくので、直接、ご依頼の方をしていただけますか? 店長がオッケー出してくれれば、全力でお手伝いさせていただきますので」
「そうか。わかった」
こんなところで営業することになるとは、思わなかった。
「君は、高校2年生だったか?」
「あ、はい。そうです」
「そうか。琴葉たちが気に入るのが、よくわかる」
「?」
そんなこんなで、僕はその話を叔母にした。
「それ、そこまでしてきて、断れないわよね?」
「ごめん。でも、結婚記念のプレゼントと聞いたら感動しちゃって、お金持ちでも手作りするって、凄いと思わない? しかも、不器用なのまで話してくれたんだよ? そこまでして、娘のを見て羨ましそうにしてる奥さんのことをちゃんと見てるなんていい夫婦だよね」
「あー、もう、わかったわよ。その代わり、きっちりと仕事するのよ? 来年は、受験生なのに引き受けるんだから、半端なことしたら許さないからね」
「わかってるよ」
そんなこんなで、僕はクリスマスが終わって、正月が終わって、三学期が始まって、学年末試験に追われ、卒業式で世話になった先輩たちを見送って、春休みになっても忙しさに変わりはなかった。
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