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しおりを挟むちくしょー! 安請け合いした過去の自分が憎らしい!!
結婚20周年記念のプリザーブドフラワーのデザイン案で煮詰まっていた。
なんか、決定的な何かが欠けている気がするのだ。
ありきたりなデザインなんかじゃ僕がやる意味がない。2人の記念をお祝いする何かがないと駄目だ。
奥さんの好きな花を詰め込むのも考えたが、2人ではないのだ。
好きな花を詰め込むなら、結婚記念日のプレゼントでなくともいいものにしかならない。そのため、僕は悶々としていた。
「煮詰まってるわね」
「……もう、ありきたりなのしか浮かばない」
「これが、ありきたり……?」
「ありきたりだよ」
「これはこれで売れると思うけど」
「ん~、まぁ、それを小さくして、ピアスとか。イヤリングにしたら、可愛いだろうね」
さらっと別のアイディアが浮かんだ。そんなことが多々あったが、僕の求めているものはそれらではない。
叔母さんは、ホクホクしていたが。
「それで、私たちの馴れ初めを聞きたいと?」
「はい。馴れ初めというか。全部をプリザーブドフラワーで表現するのは難しいので、いいとこ取りをしてもいいのかもしれませんが、僕は半端な感じではなくて、この瞬間から20年経ったというような感じにしてはと思っていて」
「ふむ。そうか。馴れ初めというか。そうだな。私たちは出会った瞬間にお互いが一目惚れしたんだ」
「っ、!?」
どうやら、恋愛結婚だったようだ。いや、政略結婚だったようだが、お見合いして、そこでお互いが一目惚れしたようだ。
そこで見た庭の景色が印象的だったと聞いた僕は、そこで見た景色をプリザーブドフラワーを使いつつ、僕がハマり始めているジオラマで表現することになった。
春休み中にお見合いをした座敷を貸し切ってもらって、写真やら写生やらをした。
お見合いしたのが、春で良かったな。
「綺麗やな」
「え?」
「あ、堪忍。これ、おやつにどうぞ」
「あ、どうも」
「お兄さん、絵描きさん?」
「え? いえ、違います」
「違うん? こないスケッチばっかして、絵描きさんやと思ってた。しかも、ここを一週間貸し切ってるし、どこかの坊ちゃんやないの?」
「あー、いえ、ご依頼をいただいて、ここからの景色をジオラマにするのを手伝うことになっただけです」
そうなのだ。金持ちなだけはある。写真だけではわからないだろうと貸し切ってくれて、一週間滞在していいと言われたのだ。
本当は1日貸し切ってもらうだけにして、写真や写生したのをメールで送信したら、なぜか一週間おさえたから、そのまま写生してくれと頼まれたのだ。
お見合い場所から見えるのと庭も、散策したらしく、その写生も描いてみてくれと頼まれて、琴葉さんのお父さんの秘書さんがスケッチブックだけでなくて、急に滞在が伸びたからと衣服やら必要なものを買い揃えてやって来たのには驚いた。
できる秘書って、あんな感じなのだろうな。
「失礼します。……凪さんが呼ばれたんですか?」
「え? いえ、おやつ持って来てくれたんですよ」
「部屋にひきこもりっきりやから」
「ここには人払いを頼んでいたはずですが?」
「え?」
人払い?? あぁ、なるほど。
ちらっと中居を見て、秘書を見た。秘書が殺気立つのもわかるな。
「そうやった? 堪忍。他の部屋と間違えたみたいや」
「あの、その、懐にいれたスケッチは置いて行ってくださいね。雨降ってるところをまた描くの疲れるんで。それとおやつは持って行ってください」
「……サービスやで?」
「すみません。僕、生八ツ橋、食べれないんで」
「さよか」
食べれないわけではないが、食べると気持ち悪くなるんだよね。今、頑張ると絵が描けなくなる。吐き気と戦いながら、絵は描きたくない。
「お子ちゃまやな」
「そうですね。大人なあなたが食べてください」
中居さんは、懐からスケッチブックを取り出して置いて、おやつを持って出て行った。
秘書は捕まえようとしていたが、僕は首を振った。
「僕のこと、どっかの絵描きのボンボンだと思ったみたいですよ」
「……」
それで、スケッチブックを盗んで売れるとでも思ったのか。あとから見つけたと言って、謝礼でももらおうとしたようだ。
それを話すと秘書は呆れた顔をした。
わかるよ。勘違いさせて、申し訳ない。ここを一週間も貸し切って絵を描いてたりするから、そう見えるのかな?
ボンボンに見えるとしたら、秘書さんが用意してくれた衣服のせいだ。
これが、必要経費に入るって思うと生半可な仕事はできないよね。
「確かに。絵描きに思われるのも、無理ないですね」
「え?」
「凪さん、絵は誰かに習ったんですか?」
「へ? いえ、独学です。花とか自然はよく写生してましたけど」
そんなことがあったせいか。秘書の方がついていてくれることになった。絵に没頭しすぎたせいかも知れない。
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