高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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結論から言うと依頼の品は思っていた以上に良い出来栄えだった。

まさか、一回母さんに壊されたことで、もっと良いのができるとは思わないよな。……でも、もう作品を叩き壊されるのは見るのも、やられるのも嫌だな。

琴葉さんのお母さんは、感激しっぱなしだったらしい。

僕は、二学期から試験が終わるまでの記憶があやふやなままだったりする。そんな状態で、作品も、受験も乗り切ったのだ。

その間に僕の好きな人には、カレシができていた。


「え……?」


それを琴葉さんから聞いた時、わけがわからなくなった。

どうやら、制作するのと勉強に追われていて、話しかけられてもぼんやりしていたようだ。

あー、なんか、朧気には憶えている。

莉緒さんは、ぼんやりしていない僕を見て、ホッとしていた。そして、カレシを紹介してくれた。

そんな紹介してほしくなかったが。

あと佳都くんと琴葉さんは、大学に入ってから別れてしまったらしい。

佳都くんが大学受験に失敗して、琴葉さんとは別の大学に行くことになり、人生初の挫折に妥協した大学生活が、どうにも合わなかったようだ。

何より、彼のお母さんの病気が長らく原因不明だったらしいが、難病だとわかってからも、自分のことに手一杯になった彼に母の手助けは手に余ってしまったようだ。

そんなこんなで、彼の家は大変なことになったようだが、僕は彼に絶交されてしまい、着信拒否されてしまって、LINEもブロックされてしまい、どこで何をしているかもわからなくなってしまっていた。

僕としても、好きな人にカレシができていることに現実逃避したかったが、そんなことできなかった。

更には、親も離婚したり、母さんに酷い目に合わされたりしたのだが、佳都くんは僕に要約すると羨ましかったようだ。

そんなに羨ましがられることないと思うんだけどな。

その反動で大学生活が荒んだかと言うと逆に僕は勉強三昧となった。どちくしょー! 経験できるものを全部経験してやる!!

自棄を起こした僕は、その後、首席で大学を卒業することになった。これに父さんは大喜びしてくれた。

もっとも喜んだのは、母さんもだった。離婚しても、僕の母親に代わりはないからと何もなかったように現れて、褒めちぎってくれたのだが、僕は無表情のままだった。


「ちょっと、もっと嬉しそうにできないの?」
「無理です。嬉しくないので」
「は? 何、それ、首席になったからって嫌味?」
「え? 違いますよ。何、言ってるんですか。あなたに会ったのが全く嬉しくないって言ってるんですよ。何で、来ないでくれって言ってるのに平然と来るんですか?」
「なっ、わざわざ来てあげたのに! その言い方は何よ!!」


母さんは、僕みたいな親不孝な息子はいらないと言うので、それはこっちのセリフだと言うと罵詈雑言を浴びせかけてきてヒステリックになって暴れ出して大変だった。


「いててててっ」
「大丈夫か?」
「あー、うん。スッキリした」


父さんは、そんな僕を見て笑っていた。その後、父方の祖父母のところに行って、美味しいものを食べた。

叔母さんたちからも、卒業祝いをもらって楽しかった。どうやら、母さんは叔母さんともやりあって、姉妹の縁を切ったようだ。

取っ組み合いの喧嘩をしたらしく、僕よりも酷い怪我をしていた。

どうやら、昔から姉妹喧嘩をする時は、手も足も出る喧嘩をしていたようだ。最悪だな。

決まって先に手を出すのは母さんだったようだ。今回、我慢ならずに手が出たのは、僕がやられっぱなしなのが気に入らなかったようだが。


「何よ?」
「接客業で、その顔は駄目でしょ」
「あの女、私の方が美人だからって、顔ばっか狙うのよね。昔からなのよ。羨ましいものを攻撃するの」
「……つまり、僕の顔も羨ましかったと?」
「あー、凪は、おばあちゃんに似てるからね。あの2人も、仲良くなかったのよね」
「……」


なんてこった。そんなことで、嫌われてたのか。

僕は遠い目をしてしまっていた。


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