僕は出来損ないで半端者のはずなのに無意識のうちに鍛えられていたようです。別に最強は目指してません

珠宮さくら

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第1章

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「おはようございます!」
「……おはよう。琉斗くんは、今日も元気ね」


有紗の母親は、夜のお仕事をしているのか。いや、ただ、単に朝に弱いだけかも知れない。朝は気怠げにしていて、有紗の母親は物凄く眠そうにいつもしていたが、娘を見送る時に時折、こうして会っていた。必ず、顔をのぞかせて見送るのだ。何なら、母親の方が先に外を伺ってから、有紗が出て来るのだ。恐る恐るといった言葉があっている登場の仕方をするのに周りは気づいていないのではなかろうか。

琉斗は、クラスメイトのみならず、この母親と会うのを何気に楽しみにしていた。何でか、琉斗はこの親子が気になって仕方がなかったのだ。まぁ、警戒しながら出て来るように琉斗に見えているだけかも知らないが。

どことなく、有紗は自分に似ている気がしていた。見た目ではなくて、何かはわからないが、直感で似ていると思えて仕方がなかったのだ。

そのため、琉斗が何かと元気いっぱいに挨拶することが多かった。そのたびに元気だと言われて、眩しそうなものを見る目を向けられた。その目には、欠片も呆れはなかった。本当にただ琉斗の中に眩さを見ているようで、娘が琉斗と学校に一緒に向かうのに安堵しているようにすら見えた。


(なんか、ママに似てるんだよな)


そんなクラスメイトの母親を見て琉斗はなぜか似ていると思ってならなかったが、何の仕事をしているかを聞いたことはなかった。見た目が似ているわけでは決してない。有紗の母親も美人だが、見た目のことではなくて、別の何かが似ていると琉斗から見えるのだが、その似ているものが何を意味しているのかがわかってはいなかった。

嫌がられてはおらず、むしろ娘が琉斗と同じクラスなのになぜかホッとしてくれているようにも思えた。だからこそ、直感を利用して偶然を装ってまで、こうして会っていたりするのだから、琉斗もこの時間を楽しみにしていた。

有紗とは他愛ない話をしながら学校に向かうのが、琉斗は密かな楽しみになっていた。10歳の女の子でも、有紗は話しやすかったのも大きかったのだ。


(こんなに話しやすいのに。クラスで浮いてるなんて、不思議だな)


琉斗は、そんなことを思っていた。だからこそ、タイミングよく家から出るようにしていた。それがてんでばらばらなこともあり、本当に偶然なのだと周りは信じて疑ってはいなかったようだ。

みんなが、みんな琉斗のことをいつも元気で明るくて、礼儀正しい男の子だと思っているようだ。中には、青いランドセルを持っていても見た目からボーイッシュな女の子だと思っている大人もいるようだ。

それは、両親がそうしているからだ。いつでも、どんな時でも、そうだったから、琉斗は普段通りにしているだけにすぎなかった。

それこそ、家が近所というだけで、一緒に登校しているだけでも騒ぎ立てる子というのは、どこにでもいるようだ。

それこそ、何年も小学生の高学年を続けている琉斗にとって、同じくらいの年齢の子供たちとでは感覚的にずれていることもあり、そういう子たちより琉斗はかなり大人びていた。

両親の前では、前と同じことを意識しているが、外ではそこまで気を使ってはいなかったせいもあるのだろう。学校まで四六時中、前のようにはできない。経験値が違うのだ。全てを知らないことだからとしていたら、何をしていいかすらわからなくなってしまい、怖くて誰とも外で話など気軽にできていなかっただろう。


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