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第1章
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しおりを挟むそんな母には家の中のことは頑張ってもらうことなく、外で仕事の方を頑張ってもらい、父が主夫となって家にいる生活が、琉斗が高学年に上がってからも続いていた。ずっと、その辺をうろちょろして中学生へと変わることはなかったが。
大概、母が早めに仕事に行くため、見送ってくれるのは、いつも父がしてくれていた。琉斗は、それが日常となっていて、母に見送られる方がそわそわして駄目だった。何が駄目なのかを琉斗は上手く説明できなかったが、とにかく母に見送られるのは避けたいことだった。
それこそ、平日に仕事が午後からの時に3人で食事して、両親に見送られるとそれだけでおかしな気分になるのだ。
(そういう時に張り切ってママが何かしようとしなくなったのは良かったけど。普通は、ママに見送られるものなんだろうけど。でも、どうにもママに見送られるとむず痒いというか。らしくなくて、そわそわしちゃうんだよな。なんか、ママのチェックの仕方が見た目だけでなくて、中身まで見られてる気がするせいかな?)
そんなことを琉斗が思っていることを両親は知らないはずだ。特にこの話が母の耳に入っていたら、大変なことになっていた気がしてならない。
忘れ物がないかを目視しているのが、鋭い感じといえばいいのだろうか? なんか見られ過ぎていて、とにかく母親に見送られるのは油断できないのだ。
(それこそ、そんなことを僕が思っていると知られたら、絶対にまずいことになりそうなんだよな。絶対にバレないようにしないと。せっかく、普通のいつもと変わらないこの歳の頃と同じことしてるんだから、無駄にはできない)
琉斗は、そんなことを密かに思っていた。両親は、そのことに全く気づいていないようで、上手くいっていることにホッとしていた。
父に見送られ家を出て数分で、琉斗が丁度歩いているとその家の玄関があいた。中から琉斗のクラスメイトの女の子が出て来たのを見て、声をかけていた。
「有紗ちゃん、おはよう!」
「お、おはよう」
彼女は、星ノ宮有紗。眼鏡をかけていて、いつも俯き加減で、どことなく自信なさげにしている女の子だ。
春から引っ越してきて友達になった。琉斗は、友達だと思っているが、有紗はどう思っているかをわざわざ聞いてはいない。
彼女は、真っ赤なランドセルを背負っていた。血のように赤い色は、有紗の肌が白いせいか。良く似合っていた。そして、癖のある黒髪をしていた。
琉斗の両親は、艷やかな黒髪をしていた。くせ一つない髪をしていて、白人のように陶器のような滑らかな肌をしていた。
2人に似た琉斗は、サラサラした黒髪に日に焼けても数日で何事もなかったように肌は陶器のような滑らかなものに戻ってしまったが、目だけが日焼けしてしまったように赤くなって中々戻らなくて大変だった。それは、数年前から起こっていた。
(瞳の中に時々、模様みたいなのが見える気がするのは気のせいだよね?)
それは、琉斗が鏡で見ている時に現れては消えていた。いつもではない。痛いわけでも痒いわけでもなかったが、赤く染まった瞳を両親が見ると決まって、慌てふためくのだ。だが、それで病院に行くことはなかった。それも、毎年のように赤く染まる期間が年を追うごとに長くなっていっている気がしてならないが、それも琉斗は知らないことになっているため、誤魔化すのも大変だった。
(物凄くややこしいな。でも、知らないままでいないと)
そのうち、学校を休んだ方がいいと言われるようになり、数日休んだこともあった。それも、数年前から酷くなってきていて、度々気をつけるようにと両親にも言われるようになっていた。
(気をつけろって言われても、具体的なことは言ってくれないんだよね。どうしたら、気をつけられるんだろ?)
そんなことを考えるようになったが、できる限り気を付けていた。目が充血したことは、ここ最近ではないが、日に灼けたつもりがなくとも、目が赤くなるタイミングが増えてもいたが、しばらく起こらないと琉斗も、もう気にすることはないかも知れないと油断するようにもなっていた。
そもそも、目が赤くなった時に何が起こるかを琉斗は良く知らなかったせいもあった。
両親があれだけ、慌てふためく理由をよく考えていれば良かったのだが、琉斗はそこまで考えてはいなかったのだ。具体例の一つでも上げてくれていたら、良かったのかも知れないが適切な具体例が物騒なものしかないことをこの時の琉斗は知らなかった。
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