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しおりを挟むそれだけではなかった。王女は、アンリエットのことを本当に心から心配してくれていると思っていた。王太子も、そうだ。
心配してくれているから、家から出そうとしていると思っていた。お茶やら、出かけようとあれこれ誘われていたが、留学してからは、それがどうも違う気がし始めていた。
「まだ、手紙が来ているの?」
「ううん。これは、友達からよ」
その手紙が、どうにも引っかかっていた。
「友達? 何か、あちらで面白いことでも?」
「ううん。私に早く帰って来てほしいみたい。私がいないと退屈で、いつ帰って来るかって、そればっかり」
そう、家に閉じこもっていた時ならわかるが、留学先にまで、戻って来て出かけようと誘われると首を傾げたくなる。
「……その方、他に友達いないの?」
「そんなことないはずなんだけど」
「アンリエット。こっちがつまらないとか書いた?」
「え? まさか、凄く楽しいって書いてるわ。何なら、留学期間を延ばそうかと思っているって、書いたら……」
「手紙が増えたの?」
「うん。物凄く」
「アンリエット、やっぱりこっちで婚約者見つけちゃいましょう」
「え?」
アンリエットに良さげな子息をと令嬢たちは、あれやこれやと話すが、最初は自分たちの身近な身内を紹介しようとした。
「みんな、身内ばっかりで、見え見えじゃない」
「だって、アンリエットと義理でも家族になれるチャンスなんだもの」
「……」
アンリエットは好かれているのは嬉しいが、げんなりしてしまった。
友達の手紙をどうしたものかと相談したかったのに婚約者を見つけようとしてくれているのだ。
アンリエットは、そこまで必死になって探していないのだが、どうしたものか。
「何だか、面白そうな話をしているね」
「これは、殿下」
全員が綺麗なカーテシーをした。
「かしこまらないでいいよ 。それより、婚約者を探しているのなら、私はどうだ? それか、従弟も、婚約者がいないんだが」
「殿下。私を巻き込まないでください」
ふと、そこで令嬢たちの1人が声をあげた。
「あ、大事なことを失念していたわ」
「大事なこと?」
アンリエットは、何があったかと首を傾げた。
「この国に嫁いで来てもらわなきゃならないってことよ」
「あら、そういえば、そうね」
「この国をそんなに気に入ってくれたのか?」
王太子は、嬉しそうにして会話にまじったが、のっぴきならない事情を聞いて、茶化すことはなく納得してくれた。
「それなら、私たちは条件にぴったりだな」
「……」
「そうですわね」
「私たちのオススメは全滅ね」
「悔しいわ」
「……」
何だろうか。アンリエットは、ハメられた気がしてならなかった。
それを見かねて、王太子の従弟が助けてくれた。王太子は、アンリエットに婚約者候補になりたいと言いながら、彼の従弟とアンリエットが婚約するなり、王太子は別の令嬢と婚約した。
元からアンリエットと婚約する気はなかったようだ。
どうやら、アンリエットに気がある従弟のリシャール・ネールを一生懸命にくっつけようとしていたようだ。王太子の婚約者もそれを知っていて、アンリエットはそんな王太子と婚約した令嬢に色々聞いて苦笑してしまった。
「殿下はひとりっ子だけど、リシャール様のことを本当の弟のように可愛がっておられるのよ」
「それにあなたの祖国の王女のしつこさも知っていたから」
「王女のしつこさ??」
「あなたが、戻って来ないとわかって、殿下と婚約しようとして、ずっと頑張っていたのよ」
「……」
「あなたをあちらの王太子とくっつこるのは、無理だとわかって、そうしたみたい」
それを聞いて、なおさらアンリエットが帰ったら大変だと心配してくれたようだ。
それは、アンリエットの友達となった令嬢たちもそうだ。リシャールのことも心配して、アンリエットのことも心配して動いてくれたのだ。
それを知ってアンリエットは、苦笑しながらも嬉しそうにしていた。
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