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第1章
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しおりを挟むマルグリットは、婚約者にお礼を言おうとしたが、逆にお礼を言われてきょとんとした。
「ウィスタリア嬢のことを助けてほしいと頼まれたのは、君より別の方に先に頼まれていたんだ」
「まぁ、そうなのですか?」
「あぁ、君が、あれだけ絶賛するだけはある。それに助けてほしいと頼むのも無理はない」
「……私より先に頼まれた方は、ウィスタリアのことを想っておられるのですね」
「さてな。そこまでは立ち入れない。……上手くいけばいいとは思うが。君にも見せたかった」
「何をですか?」
「古代語に関しての討論だ。私のように知識が浅い者にもわかるように噛み砕いての討論だ。あれを見た古代語好きも、そうでもなかった者も、あんなことができる令嬢の夢だと聞いて、事業に関することを聞かずにスポンサーになる者は多かった。貴族だけではない。雇ってほしいと言うのも出ている。本当に素晴らしい方と友になったな」
そう言われたマルグリットは、嬉しそうに笑った。誰が認めるよりも、婚約者に絶賛されたのを聞いてマルグリットは花が咲き誇るような笑顔を見せた。
そんな風に絶賛する者が、ウェールズには少ないことに見る目がないと思ってもいたが、嫁ぐ先と婚約者が素晴らしいことを喜ぶばかりだった。
そんなことがあって再び、この日を迎えた。でも、友達と楽しくお茶をするよりも、婚約者が心配というか。気を利かせてくれた人たちが心配になってしまい、お喋りもそこそこにいなくなるのを寂し気にマルグリットだけでなく、他の令嬢たちもウィスタリアを残念そうに見送ったが、止めることはなかった。
ウィスタリアが、あの子息と婚約してから、ゆっくりとできていない。ずっと、こんな感じだ。
「まぁ、わからなくはないけど。もうすぐ卒業するというのに残念すぎるわ。あれは、もはや婚約者というより……」
「調教師?」
「そんなの調教しがいがなさすぎるわ。動物の方が、物覚えがいいでしょ」
とある令嬢が、そう言うとそれをきっぱりと違うと言い、それに他の令嬢は確かにと頷いた。
すると別の令嬢が……。
「あれは、シッターとかですかね?」
「……それは」
「流石に」
言い切る令嬢に頷きかけた令嬢たちは、ハッとした顔をして頷くのをやめた。
「宝の持ち腐れよね」
それには、全員が頷いた。
「でも、婚約しているからこそ、凄いことになってるんですよね。さっさと卒業して、結婚したらと思ってしまいますが、あれが夫になるのなんて、もったいなさ過ぎすぎますわ」
「仕方がないわよ。それより、せっかく婚約者たちに協力してもらったのに。役に立ってくれたのかしらね」
「どうでしょうね」
「快く引き受けてくれましたが、30分が限界とか言ってたけど、もっと限界は短そうよね」
「そうですわね。ウィスタリア様は、よくおわかりだから、行かれたのでしょうね」
ゆっくりしてほしいと思っていても、それをフォローしてくれる人がいないのだ。そんな状態で、誘うのも心苦しかった。
「いつになったら、ゆっくりとお茶ができるんだか」
「それは……」
「婚約している限り無理かもしれませんわ」
「……ウィスタリアのケーキが食べたいわね」
ぽつりと呟いた声にこれまた同意するように頷いた。
ウィスタリアの作るケーキは、美味しいと評判なのだ。誕生日に焼いてもらいたいと頼む者もいたが、ここ最近はそんな頼みをためらわせるほど、ウィスタリアは多忙を極めていて食べたいとここに集まる令嬢たち誰もが思っていたが、頼めずにいた。
特にマルグリットは好物だった。あの約束が実行されるのは嬉しいが、毎年1回の誕生日ケーキが食べられないことが数年続いただけで、凹んでいた。
そんな時にこう言った。
「王太子殿下の婚約者よ」
大きな声ではなかったが、それに反応した令嬢たちはアイコンタクトをした。
ウィスタリアの時とは全く違う緊張が、残された令嬢たちは素の顔で話していたのを切り替えて、こちらにやって来る令嬢に応対した。
それだけでもわかる。ウィスタリアとその令嬢とでは、そこにいる令嬢たちはウィスタリアは好きだが、王太子の婚約者となったジュニパーは油断ならない相手であり、好きではないと言葉にしなくとも誰もが思っていた。
その2人が、かたや何かと親友だと言い続け、かたや王太子と婚約するまでは親友だと言っていたが今は言わなくなった令嬢同士となっていた。
それをそこでお茶をしていた令嬢たちの誰もが知っていた。
「皆さんだけ? ウィスタリアは?」
「先ほど、用事があると言われて、お帰りになられました」
「あら、また会えなかったのね。残念だわ」
残念だと言いながらも、そうは見えない顔に本音では、ここでお茶をしたのは間違いだったと酷く後悔していることに後から来た王太子と婚約した令嬢は気づいていないようだった。
さも当たり前のようにウィスタリアが座っていた席に座って、平然とお茶を頼んでいた。
普通なら、座ってもいいかとか、ご一緒してもいいかと言うところだが、彼女は令嬢たちと約束していたかのように当たり前のように座るだけだった。
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