初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

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第1章

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だが、今はそれよりもウィスタリアが親友だと思っていた令嬢のことよりも、彼女が周りにどう思われているかなんてことよりも、婚約者がどこにいるかで珍しく焦っていた。

お茶をしている令嬢たちと婚約している子息たちが、気を利かせてソレムを足止めしてくれているはずだが、見失ってしまったようだ。だが、それを責められはしない。


(やっぱり、困らせてしまっていたわね。見張りをさせるプロでも、頭を抱えほど難しいのだもの。私とて、まだわからないのよね)


「ウィスタリア嬢、すまない」
「手洗いに行くと行ったっきり見当たらないんだ」


それを聞いて、ため息をつきたくなった。


(そこから、どこ行ったんだか。本当に自分で言ったことすら、忘れるから困ってしまうわ)


それを聞いて、ウィスタリアは頭を抱えたくなった。目の前の子息たちは悪くない。気の赴くままに居なくなるのは、いつものことだ。そういう気分に切り替わってしまったのだろう。本人も、それを止められないのだ。誰かに止められるわけがない。


「この辺を探してみます」
「私たちも手伝う」


子息たちが手分けしようとしたところで、ソレムが呑気に声をかけて来た。

手洗いに行くと言ったのにそんなこと言ったことを忘れて、散歩していたと言ったのにそれを聞いた子息たちの顔が引きつらせた。そして、手洗いに行く前まで一緒にいたはずなのに今日初めて会ったかのようにされたのだ。遠い目をするのは仕方がない。

ウィスタリアは、もう慣れてしまった。慣れるしかなかった。ソレムは、そういう人だ。


(そうなるわよね。でも、こういう方なのよ。相手をさせて申し訳ないわ)


月に一度のお茶を彼らの婚約者の令嬢たちとするように再び取り計らってくれたが、前にした時から数年が経過していて、子息たちもそうでなければ相手になんてしたくないのだ。それでも、ほんの少しでもと思っても、これだ。年々酷くなっていっているが、よくなってはいない。

ウィスタリアは、ドン引きしている暇もなければ、もう無理だと投げ出す暇もなかった。そんなことをして、長い時間ほっとくととんでもないことしかならないのだ。長い時間なんかじゃなくて、短時間でも最悪なことをする。それがすべて無自覚なため、困ってしまう。

ウィスタリアは婚約者に危機感しか持っていなかった。彼を家に戻すまでは、目を離せない。家の者は慣れていた。今回のことがあってから、俄然、ソレムを野放しにできないと思ったようだ。

それもこれも、この数年、寝る間も惜しんで彼の家の事業の立て直しを必死になっているウィスタリアを見ていたからだ。

そうなる原因というか。要因が、この通りのまま無自覚なのだ。また、何かして台無しにさせられないと気合が入ったようだ。たまにベッドに縛り付けたくなるようだが、それはしていないはずだ。

ウィスタリアは目を離すとろくなことをしないと思うようになり、尽くしに尽くしているとまで言われるまでになってしまっていた。不本意でしかないが、フォローをしなくては、相手を不愉快にさせるのが得意すぎるのだ。

この婚約者のせいで、ウィスタリアが奮闘して疲労困憊になっていたというのにそれをやらせたという考えが彼の頭の中に芽生えることはなかった。

自分のせいで婚約者に苦労をかけてしまっているという気持ちを持つこともない。

そのせいで、忙しなるのがわかって片時も目を離さずいるのは流石に無理だとなり、ソレムの両親に頼んで人を雇って見張らせたほどだ。

周りに頼むなんてできなかった。お金をもらってもやりたくないのだ。見張っている人たちにとって、割のいい仕事に思えたが、実際にやってみると数日どころか。1日で勘弁してくれと言った者はかなりいた。

それでも、数日持つ者たちだけで、ローテーションで彼は見張られることになったが、それに彼が気づくことはなかった。

流石に気づかないはずがないと言い訳を考えていたが、必要なかった。


(本当に不思議よね。こっちが気にしていると、それがわかるみたいなことをする。でも、前回そうだったからって同じにならない。こんな人もいるのね。……交渉相手が、婚約者のような人だったら、私でも上手く交渉できる自信がなかったわ。それに比べたら失礼だけど、みんないい人たちでよかったわ。まぁ、父は全てを理解して賛同したようには見えなかったけど)


他の貴族の当主たちにたくさんあったせいか。自分の父親の先見の明のなさにげんなりしてしまった。

まぁ、それはいいとして婚約者のことだ。普通は気づくところだが、それに気づく普通を彼は持ち合わせていない。

それが、ようやく事業の方は何とかなったから、ウィスタリアは婚約者の務めとして彼を見張る役目を自分が再びやると言ったが、。彼の両親や使用人たちはそんなことをすればウィスタリアが倒れかねないからと必死で止められた。

見張る面々も同じようにウィスタリアを止めた。でも、コツがいるため、ローテーションで見張っていても休みがないと彼らがまいってしまう。

だから、時間で区切ることにしたが、今日は担当していた人物の子供が具合を悪くして、嫁も同じように寝込んだらしく、他に頼んでも具合をわるくさせては大変だからと自分が面倒みたいと言うので、ウィスタリアが変わることにした。

そう、それが尽くしに尽くしているように見えるだけだ。

だからこそ、婚約者同士という訳でもなければ、家庭教師や調教師でもなくて、シッターと揶揄されるのだ。


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