初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

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第1章

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そこまでのことを思い出して、ウィスタリアは現実に舞い戻った。

動くならば、仕掛けて来る味方になったように見せかけた人たちだと思っていた。それが、またも、ソレムが動いたことで起こるとは思いもしなかった。

あり得ないことでもあり、やるならウィスタリアは自分からとっくにしていたと言いたいことをされることになるとは思うまい。

しかも、誰もが婚約者にはなりたくない。なったら、修道院に入ると言うような子息から、婚約破棄を告げられて傷物になるのだ。

王太子の婚約者にもっとも相応しいと誰もが認めていたはずの令嬢が、真逆の男によって。でも、それをあざ笑う者は、そんなには多くないはずだ。

絶対に笑って馬鹿にするのはジュニパーだろうが。そんなことは、どうでもいい。

そんなことよりも、ウィスタリアはつけ入る隙を与えないようにした


(このタイミングで、婚約破棄。これもいい方向に向かわせなければ。私のせいで、台無しにはできない。そのために成すべきことを成さなければ)


寝ないでウィスタリアは、手紙を書いていた。書くことに困ることはなかった。名前を書くたびにつらつらと思い出が蘇った。

ウィスタリアの記憶力は、素晴らしいものだった。唯一思い出せずにいたのは、認めたくないことがあるからにすぎない。その記憶だけは、どうしても認められないまま、この事業を語らった相手が、王太子となるはずだった人であり、ウィスタリアの初恋の人であり、もう他界人だと言うことだけを見れないまま、事業が失敗に終わることも、この事業を他の人が引き継ぐこともウィスタリアはしたくなくて、成功させるために手紙を書きつつけた。

それは数日のうちに部屋の中に溢れかえるほどだった。


(こんなにたくさんの人に出会ったのね)


書き終えた手紙の束を見て、ウィスタリアは思った。


(ふふっ、この手紙なんて書かなくとも、敵だった人たちが、あたふたしながら味方してくれるのを見たいと思うのは、意地悪かしらね。あの人たちが、どんな顔をして手助けしてくれるのか。とても気になるところだけど、そんな人たちがいい人に思われるのも嫌だもの見せ場なんて与えたくない。……でも、図に乗らせるのも、いいことなのでしょうね。……でも、やっぱり嫌なものは嫌だ)


そんなことをウィスタリアは思ったが、あの人たちにいい人みたいな見せ場を与えるのも策のうちだと思えたが、ウィスタリアはそんなことをしたいと思わなかった。

敵も味方も関係なく、みんなが幸せに過ごせる未来が来ることがウィスタリアの望みであり願いだったが、まだまだウィスタリアは子供のようだ。


(あの人が見たら喜ぶはず。一緒に見たかった)


疲れて眠る時にそんなことを思った。

認めることができずとも、既にウィスタリアは受け入れ始めていたが、それでも意識がしっかりしているとおぼろげになるのは、それだけ早すぎる別れから数年経っても認めたくなかったが、ウィスタリアが認めずとも現実が変わらないことをどこかで受け入れてもいた。

そんな複雑な気持ちの中で、大事を成そうとしていることに気づいていたのは、ごく僅かだった。

その中に血の繋がった者たちは、誰もいなかった。


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