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第2章
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しおりを挟むウィスタリアは、実の妹の無邪気な殺意によって、短い人生を終えることになった。それを抵抗することなく受け入れたのは、それだけ心も身体も疲れきっていたからだろう。
想い人が亡くなっていることを受け入れ、幼い頃にあの方と語らっていた事業にも関われた。王太子の婚約者になっていれば、関わりをもてはしなかったはずだ。
(もしかして、あの夢を覚えていてくれたのかしら?)
王太子となった第2王子のエルウッドは、勉強なんて殺らなくて済むならやりたくない王子だった。
第1王子であるフロリアンと語らっていると全くわからないと怒ってばかりいて、遊び回ろうとばかりしていた。
(……あんまり、ピンと来ないわ)
頭の良さが、兄とは違うことを受け入れていても、女のウィスタリアより劣るのが我慢ならない顔をしていたのを思い出していた。
王太子となってから、第1王子と第2王子の記憶が混じってしまっていたが、今思うと彼には嫌われていた気がしてならない。
(自分よりも勉強できない方を婚約者に選んだなんてことはないはずだけど……)
ウィスタリアは、そんなわけないと思っていたことが、自分が亡くなった後に起こっているとは思わなかった。
散々名前を避けるようにしたが、第1王子の名前を思い出せて、ウィスタリアは晴れ晴れとした顔をしていた。
(フロリアン様。亡くなったことを認められずにいたけれど認められた途端、私がこんな風に死ぬことになるなんて、皮肉よね)
妹はあの調子だ。あの時、死ななくとも上手くいくまで付き合わされることになったはずだ。姉である限り、それが終わることはない。味をしめたら続けられそうだが、そんなこと続けられるわけがない。他の者にそれを向けさせるわけにもいかなかった。
一度でも、そんなことをしたとわかれば、周りが気づかないわけがない。どうやってバレるかは、想像したくないが、バレないはずがないとウィスタリアは思っていた。
そして、その一瞬で、ウィスタリアはプリムローズの姉でいることを辞めたくなってしまった。そんな風に思うのは生まれて初めてだった。そんな辞め方、普段のウィスタリアならしなかった。
そう思わせるタイミングが重なったのだ。
(死んだら会えると思ってはいなかったのだけど……。心のどこかでは会いたかったのよね)
第1王子のことを思い出そうとして、思い浮かべたのは、隣国の少年だった。それを思い出して涙した。懐かしいと思うはずだ。
今、思い出した第1王子と隣国の少年は、姿形は違っていたが、古代語の話やあの事業の話をしている時が似ていた。
「ウィスタリア嬢」
「ウィスタリア」
思い出して、更に泣いた。あの少年とまた会いたかった。
でも、年が離れている。ウィスタリアは自分のようなのが、親しくしていては彼の婚約の邪魔をしていたかも知れないと思う気持ちもあった。
(……そう、よね。年が離れているもの。私のようなのが側にいたら、誤解されて良縁を逃してしまう)
ウィスタリアは、彼が一目惚れをして、二度も婚約を申し込もうとしていたことも、困っている時に手助けしてくれようとしていたことも知らなかったため、邪魔にならずに済んだのだと思おうとしていた。
更には、彼の兄が、フロリアンに生まれ変わりだと何気にずっと思っていたことも、それを彼が聞いたことも知らず、ウィスタリアは叶わないことと勝手に思い込んでいることにも気づいていなかった。
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