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第2章
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しおりを挟む侍医は、朝昼晩と診察に来た。必ず助手を連れていた。
ウィスタリアに起きてから何があったかを聞いて怒り心頭になったのは、果物を初めて食べた次の日だった。
まぁ、無理もない。ウィスタリアは、なんてことないと思っていたが、頭痛と熱を出して寝込むはめになったのだ。
それは、起きてからだけのせいではないが、数ヶ月も起きなかった人間の側でやることでもなかった。
ウィスタリアが目覚める前にしていたことに気づいているのは、侍医だけだった。
(寝る間も惜しんで頑張っていた時は、熱も出して寝込むわけにはいかなかった。それが、数ヶ月も寝てた反動がでたのか。まぁ、熱はあっても、休むに休めなかったから、気が張っていたのもあったのは確かね。あれね。気合が足りない)
天姫だと言われても、実感などわくはずもない。更に目覚めてから、あの調子だ。
「天姫様」
「……」
正直、そう呼ばれるのが好きではなかった。
それが伝わっているはずだが、侍医も、その助手も、それをやめてくれることはなかった。
言ったところで、困らせるだけだろうが、呼ばれたくもないのにそう呼ばれるのは、中々のストレスだった。
それがわかったのか。返事をしないことに頭を悩ませた侍医は……。
「失礼ですが、ウィスタリア様とお呼びしても?」
「……呼んでくださるのですか?」
「お許しくださるなら」
「なら、そう呼んでください」
そこで、初めてウィスタリアは笑顔を見せた。
それから、数週間して、やっと神官長に会うことになった。
だが、本当なら、もっと早く会うはずだったが、神官長は毎日のように侍医にウィスタリアがどうしているかを神殿の者を遣いに出して聞いていた。
最初は、聞きに来ていたのは、神官だったようだが、次第に忙しくなったのか。見習いが聞きに来るようになり、ウィスタリアの部屋の外で揉めているのが聞こえた時が何度かあった。
「私が、休めないと伝えてくれますか? それと侍医が許可を出すまで、どうしているかとわざわざ聞きに来るのは控えるように私が言っていて、毎日、私のせいで責め立てられて、仕事にならない侍医を見て心苦しく思っていると」
「ウィスタリア様」
「仕事にならないのは本当でしょう?」
「……はい。ですが」
「言えないなら、私が直接、言います。私の療養の邪魔をしているのは、廊下で騒ぎ立て、ヤブ医者呼ばわりした挙げ句、大して休む必要もないと勝手に決めつけて、約束を取り付けようとしているせいだと。それが廊下で騒ぎ立てるせいで、耳障りで気が休まらない。事実ですから。それに女官長と女官を辞めさせる元気があるともおっしゃっていましたね。神殿から来ている方が、そんなことを吹聴して回っている。事実でもないことを言われて、神官長に会いたいと思うわけがありません。……やっぱり自分で言います。その方がスッキリしそうですから」
こうして、部屋から出れないストレスもあり、ウィスタリアはボロクソに言う見習いと必死になっている侍医のいる廊下に出た。
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