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第2章
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しおりを挟む天姫が、治らないはずの病を治して回っていると噂されるようになって、ランとジュニパーはそれを耳にすることになったが、それを耳にしてもずっと馬鹿にしていた。
「あの醜い弟が治るわけがない」
「病を治すふりをして、天姫だと思わせようとするなんて、とんでもない悪女がいたものだわ」
2人して治るはずがないと思っていて、それをふりまでして天姫を名乗ろうとしているとばかりに罵っていた。
「心配しなくとも、治らないとわかれば、民衆が吊し上げてくれる」
「そうなれば、誰が本物なのかもわかりますものね」
「その通りだ」
そう思っていた2人は、特に何もせずに贅沢三昧な日々を送ることに専念した。それこそ、相手の方が勝手に自滅してくれるのだから、何もすることもないと益々好き勝手なことをし始めたのも、この頃から酷くなった。
そんな2人に呆れる者は、日をおうごとに多くなる一方となっていた。
「第一皇子とジュニパー様は、またなの?」
「そうみたいよ」
第一皇子は、やりたくないことがあると天姫が呼んでいると嘘をついては、ジュニパーのところに入り浸るようになっていた。
第二皇子が病気で、王の跡を継げるのは自分しかいないのだからとたかを括っているのもあった。
そのため、天姫はジュニパーに決まっているという自負も相まって、前よりわがままが酷くなっていた。
毎日のようにランが訪ねて来ては部屋に入りびたるせいで、ジュニパーも以前よりも傍若無人になっていた。気に入らないことがあると当たり散らすのも酷くなっていた。
そんなわがまま放題となったランとジュニパーに仕えている者たちは、いい加減してくれと思うようになっていくのも、すぐだった。
それこそ、彼らの側にいる者たちは、今後のために仕えているような人たちばかりだった。自分たちの未来のために家のためになると思って、最初は勝ち組の方にいると思って、ウィスタリアたちの方に仕えている者を馬鹿にして嘲笑っていた。
でも、ここに来て自分たちが選んだ方に疑問を持ち始めたのだ。
「天姫はこっちだと思っていたのに。ただのわがまま女の世話をやってるだけじゃない」
「しっ! 聞かれたら大変よ」
それでも、ジュニパーが天姫だということにならないと困る面々が裏で動くようになるのも、それから間もないことだった。
もっとも、ウィスタリアはその手のやからが来るだろうと思っていた。元婚約者の心配で盛り返した手腕は、今も健在だった。
天姫でないことを証明するにしても、誰かを犠牲にして証明する気はなかった。
(散々苦しんで来た人たちに手を出す方向に動くだろうとは思っていたけど、私が作るものは毒すら良薬にしてしまうみたいね)
薬草に毒草がまじるようになった。そうなるのは、ウィスタリアも考えていた。それを使って煎じたもので死者が出たら、天姫なんて思う者は誰もいなくなり、吊し上げられる。そこをついて、何もしていないのにあちらが、天姫だと証明することに使えるのだ。
だけど、それはウィスタリアもそれ以外も自分なら、潰しつつ一石二鳥どころか。何もせずに天姫になるためになることを何パターンも考えていたが、それ以外にも動かれた時のようにしていたが、相手側はウィスタリアより悪事に長けてはいなかったようだ。
(私の方が、悪いことするのに向いている気がする)
そんなことを思って、何とも言えない感情が残ってしまった。
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