初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

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第2章

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周りは、ウィスタリアを天姫ではないと言うのと薬を煎じて貴族の気に入らない者を殺そうとしたうんねんで言い争いを繰り広げている中で、ウィスタリアは辛うじて息をしているような状態の人たちを見ていた。

ウィスタリアが近づこうとするのも、反感を買って駄目だった。

そんな人たちにすぐさま駆け寄ったのは、ウィスタリアではなかった。プリムローズとソレムにそっくりなあの2人だった。

服が汚れるのなんてお構いなしに地面に膝をついて、楽な姿勢になるように体勢を替えていた。


「ウィスタリア様、こんなのあんまりです」
「……」
「お願いです。この方たちを助けてあげられませんか?」
「俺からも、お願いします。こんなの、見ていられない」
「……」


罵り合いや罵詈雑言が繰り広げられる中で、2人はウィスタリアにそう言った。彼らの家族たちに色々言われ、暴力を振るわれようとも、プリムローズとソレムにそっくりな2人はやり返すなんてせずに血を流しながら、病気で苦しむ人たちを守るようにして、ウィスタリアに懇願した言葉は、自分たちを助けてではなくて、その人たちを助けてあげてほしいというものだった。

この2人は、ウィスタリアのことを本当に天姫だと思っているのだ。それが、ウィスタリアの胸に突き刺さった。自分たちのためでなく、名前も知らない誰かのために助けてほしいと切望しているのだ。

それを見てウィスタリアは、こんなことを思ってしまった。そんなこと考えても詮無いことなのに考えずにはいられなかった。

ウィスタリアがよく知る人たちとは、真逆な人生を歩む2人にウィスタリアは泣きそうになってしまった。


(この子が、私の妹だったら……。本当の妹が、私を殺して幸せになることを望んでいることをわかって、それを抵抗なく受け入れることもなかった。そもそも、この子が妹なら、殺そうとなんてされなかった。こんな妹になってほしかった。純粋なまま、大きくなってほしかった)


それなのに妹の望みだからとウィスタリアは死ぬことを回避しようとしなかった。むしろ、受け入れてしまったのだ。

そもそも、想い人であるフロリアンに選んでもらえなかったと思い込んでいたが、それが違っていたとわかり、ウィスタリアは2人でやり遂げたかったことを始めて、どうにかなりそうだとわかって、それ以上に頑張る理由がわからなくなっていたのもあった。

それを誤魔化して生きていくのかと思うと辛かったのだ。元婚約者のために頑張っていたわけではないが、それも評価されず、あろうことか隣に並ぶに見劣りするようなことを言われ、それでズタボロにもなったが、それでもやりたいと思っていたことは叶う目処がついていた。

王太子が生きていて、ウィスタリアが選ばれなかったのなら、とっくにおかしくなっていた。それが、現実を受け入れきれなかったところがやはりあったようだ。


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