初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

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第3章

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(生まれて来たことに感謝してくれているのはわかるし嬉しいけど、それを私が作るって物凄く変な気分。こんな変な気分初めてだわ)


こんな複雑な気分を味わう者は、他にはいないだろう。いたら困る。

それでも、断れなかった。作ったら、一目でも両親はともかくとして、知り合いに会えるかも知れないと思ったからだ。遠目で見るくらいのことはできるかもなんて思っていたが、そんなに上手くいくとは思っていなかった。

まさか、パーティーに呼ばれるとは思っていなかった。


(ウィスタリアが一番好きなケーキを作ってしまったのはまずかったわね。ちょっとでも、アレンジすればよかった)


見た目は華やかなものにしたが、土台となるケーキはウィスタリアが一番好きなものにした。

それを食べた両親や親戚、ウィスタリアの友達は泣いた。

生前食べたことがある者みんなが泣いてしまったのだ。


「ど、どうされたんですか?」
「ううっ、申し訳ない。これは、ウィスタリアの好物だったケーキに味がそっくりで」
「え?」
「あの子が、焼いてくれたケーキによく似ているわ」


親戚も、ウィスタリアに頼み込んで焼いてもらうほど、美味しかったといい、泣きながら食べていた。


「リーリエさんと言ったわね」
「はい」


両親や親戚、友達にレシピを教えてほしいと言われたが、リーリエは断った。


「申し訳ありません。お店でも人気のケーキなので、教えるのは……」


こんなことになることまでは考えていなかったが、レシピうんねんは言われるかも知れないと店に出していた。

それは苦肉の策だ。断る理由が欲しかったのだ。


(物凄く好評になって、びっくりしたけど)


だから、なおさら断りやすかった。これは、企業秘密だ。その方がいいはずだ。レシピは、誰にも教えていない。そのままでよかった。


「そう。なら、今度、お店に伺うわ」
「申し訳ありません」
「謝らないで」
「お店でも人気なんですよ」
「そうなのね。わかるわ。とても美味しいもの」


ローザも、一緒になって諦めてもらうのに色々話すことになった。最後はみんな、お店に来てくれることになって落ち着いたかと思ったが……。


「あの、ケーキを頼めないかしら?」
「え?」
「あなたのケーキ、とても美味しかったわ。その、数ヶ月後に結婚するのだけど、その時にウェディングケーキを頼めないかと思って」
「……」


ウェディングケーキと聞いて、リーリエは変に反応しそうになった。


「私、お姉様のお友達だったウィスタリア様のケーキが大好きだったの。お姉様も、結婚式のウェディングケーキをウィスタリア様に頼む約束をしていたのだけど、あんなことになってしまって……。他の方に頼んで素敵なお式になったけど、お姉様はウェディングケーキを食べて、ずっと泣いていたわ」
「っ、」
「その姉も、私の結婚式に来てくれるの。隣国に嫁がれたから、滅多に会えなくなってしまったけど。お姉様に食べてもらいたいの」


この令嬢が誰かに似ていると思っていた。ウィスタリアの友達の妹だったようだ。


(そういえば、大昔にそんな約束をしたっけ。冗談だと思っいたかったけど、本気だったのよね)


それをリーリエとなっても覚えていた。最初で最後のウェディングケーキを作った。

その時も新婦も、その姉も、ウィスタリアのケーキを食べたことのある令嬢たちも泣いてしまって、大変な結婚式になったようだが、嬉し泣きして泣き腫らした顔で最後は楽しいものになったようだ。


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