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第3章
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しおりを挟む「この実。……リーリエさん、これって、あの実じゃないですかね?」
「? あ、あの実ですね」
旅行者だった若者は、それまでずっと放浪の旅をしていたらしいが、リーリエと出会って意気投合して、一緒に喫茶店で勤めるようになった。接客業務ではなく、困りごとを解決したりしている。接客業も向いていなかった。
ほうぼうを旅していたこともあり、色んなものを見聞きして一度で覚えるのもあり、応用が利くため重宝がられていた。
だから、わざわざリーリエに確認なんてしなくともわかったはずだ。
「あの実って?」
「食べ過ぎると腹痛になる実なんですよ」
「は? 嘘でしょ?!」
ライバル店が開店記念に大安売りしていて、並んでまで買って来たらしく、味を見ようと持って来たようだ。
それを切り分けようとしたのを青年が止めたようだ。
「腹痛になるって、本当なのかい?」
ローザの言葉にリーリエと旅行者だった青年は頷いた。
「量によっては、2、3日こもります」
「すぐに知らせてやらなきゃ、大変なことになる」
だが、それを営業妨害だと言い、売るのをやめなかったせいで、被害は拡大することになった。
リーリエたちは知り合いには連絡して回った。店を休んでまで、それをしたのだが……。
「マジかよ」
「でも、食べ過ぎなきゃいいんだろ?」
「勿体ないから」
「そういう問題では……」
「そうですか。我々は忠告しました。今後は自己責任で、お好きになさってください」
青年は、そう言うとリーリエの腕を掴んで他を回った。勿体ないからと食べるものが多かったのにリーリエは呆れた。
「まぁ、あぁいう連中は経験してみればいいんですよ」
「……」
「リーリエさん?」
「しばらく、お店を休んだ方がいいかな」
「なぜ?」
「トイレを借りに来られて、立てこもられたら嫌じゃないですか」
リーリエが、そんなことを言うとは思っていなかったのか。青年は、笑っていた。
そんな風にせっかく駆けずり回って知らせても、腹痛を甘く見ていた者は痛い目を見ることになった。
そんなことになった店が閉店したのは、すぐだった。腹痛騒ぎを起こした時に働いていた人たちは、夜逃げしていた。
それを買って腹痛になった人たちの怒りは凄まじく、オープンしたばかりの店は酷いことになった。腹痛が治まってからだったが。
「食べたら、あんなことになるとしっかり言ってくれよ」
「そうよ。大したことないと思って勿体ないから食べちゃったじゃない」
リーリエたちは、当たり散らす矛先が夜逃げしたせいで、嫌味を言って来る人たちに呆れてしまっていた。
「あ? 言いがかりもいいところだな」
「そうだよ。ほうぼう走ってまで、必死になって知らせてくれたのに勿体ないからって食ったあんたらの自業自得じゃないか」
「あたる相手を間違えてるんじゃねぇか?」
「っ、」
常連客は、そんな人たちに物申してくれた。青年も、自己責任だと言ったとして、それ以上言って来るなら訴えると言うと来なくなった。
他所で愚痴っていたようだが、そのせいで爪弾きにされることになったのは愚痴っていた方だった。
そのおかげで、平穏は思っていたより早く訪れた。
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