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しおりを挟む梨乃が再びやらかしたのは、まもなくのことだった。
天音の誕生日だから、プレゼントを直接渡したいと押しかけて来たのだ。
(誕生日なんて、よく覚えていたわね)
天音は、そんなことに思わず感心してしまった。それこそ、幼なじみとは言え、誕生日を祝いあったことなどなかったのだ。
(もっとも、私の誕生日は先週だったけど)
それこそ、婚約者となって初めての誕生ということで、大変だった。
(あれ以上に大変なことは、しばらくないと思っていたけど、梨乃がここに来るとは思わなかったわ。誕生日を理由に私に会いに来るとはね)
この頃には、勉強にも何とかついていけるぐらいになったが、お妃教育に忙しくなっていた。そのため、予定にないことをする余裕は天音にはないと言ってもよかった。
それなのに梨乃は、直接プレゼントを渡すだけで帰ろうとはしなかったのだ。
それこそ、門のところで騒ぎ立てているところに天音が運悪く出くわさなければ、梨乃は入る許可さえもらえなかった。
(約束してないからって、帰ってもらえばよかったわ)
梨乃は、何を言っても天音がお下がりをくれないと思って、トイレを借りるふりをして部屋を勝手に物色して、髪飾りやら服やらを持ち出そうとした。
天音は、まさか、梨乃でも盗みなんてしないと思っていて、トイレから戻るなり帰ると言い出したことに怪訝な顔をしてしまった。
(すんなり帰ってくれるならいいか)
ここで、機嫌を損ねて残られても困ると思って送ろうとしていた。
すると天音のところに幼なじみが来ていると知らせを聞いた義仁がやって来て、梨乃が天音にやったものを持っていることに気づいたのだ。
「天音。下げ渡したのか?」
「え? いえ、梨乃には何もあげていません」
梨乃は、気づかれるとは思っていなかった。とぼけていたが、彼が王子だとわかって、今度は彼から何かもらえないかと言い始めたことに天音だけでなくて、周りもぎょっとしたのも、すぐだった。
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