醜くなった私をあっさり捨てた王太子と彼と婚約するために一番美しくなろうとした双子の妹と頼りない両親に復讐します

珠宮さくら

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「絶対に、許さない」


エイベル国で、いや、この世界で彼女ほど怒り狂っている令嬢はいないだろう。


「許してなるものか」


彼女は自室のベッドに起き上がって、そんな言葉を呟きながら腸を煮えくり返させていた。

その顔は包帯で巻かれているため、以前のような美しい声ではなかった。まるで、おとぎ話に出てくる人物のようだった。何か悪いことをしたから、こんな目にあっているのではない。こんな仕打ちをされるような生き方を彼女はしてはいないはずだ。

彼女のことを知る者は多い。とても美しい顔とそれに見合う声をしていて、エイベル国だけではなくて、隣国の人々にも彼女がとても美しい顔と声をしていることが知れ渡っていた。本人が自慢して歩いていたわけではない。それをしていたのは、身内だ。

そして、自慢しているのとは別に真逆なことをしている者もいた。周りは、そちらと同じようなことをしている令嬢たちが多かった。

嫉妬による妬み、嫉み。ただ美しいだけで何の努力もせずにちやほやされていると思っている連中は、そんなことをしていた。

異性は、そんな令嬢たちと違う反応をしていた。その顔を一目でいいから見たくて、エイベル国に留学して来るのだ。そのほとんどが、異性で彼女を目当てに来てはいなくとも、彼女と話して人柄に触れて虜になって名残惜しそうに帰って行った。

別に誘惑しているわけではない。ただ、留学して来ている面々に親切にしているだけなのに勘違いされて、帰国後に婚約者の令嬢と口論になって、婚約が破棄になったり、解消になったりしているようだが、そんな面々が彼女に婚約者になってくれと言って迫って来ることは滅多になかった。

逆にこんな風になったのも、彼女が誘惑したせいだとばかりに怒鳴り込んで来る令嬢もいたが、彼女を目の当たりにして勝てないと思って、何も言わずに帰る者も少なくなかった。

まぁ、そんな風に帰って行く女性がどれほどいるのかも。彼女に物申すにわざわざ来ていない者もいるから、どれほどの影響力があるのかを把握しきれていないが、そんな顔を持って生まれたことで、彼女は同性から嫉妬され、妬まれ続けていた。

その中でも一番妬ましく思っているのは、彼女の身内だったようだ。

美しかった顔は包帯のせいで見えないが、その下は美しかった頃の面影はないだろう。大怪我をして、美しい顔が元通りになるのは難しいほどとなっているから、包帯を巻いているのだ。

こんな風に怒りをあらわにするような令嬢ではなかった。だが、こんな大怪我をすることになったことで、彼女の我慢は限界を迎えてしまった。それだけではなかった。

こんなことをした人物が、怒り狂っている令嬢と婚約するはずだった人と婚約すると耳にしたから、怒りがおさまることなく燃え上がっていた。

しかも、その婚約をする男性は、怪我をした彼女と何年も前から想いあっていた。……そのはずだった。


「君なしでは生きていけない」

「一生、私の側にいてほしい」

「君と婚約できなければ、私の心は堪えられない。死んだも同じだ」


彼は、ことあるごとにそう言っていた。それは、怪我をした方の彼女も同じだった。色んな人たちに嫉妬され、妬まれていても、彼だけが自分を理解してくれている。そう思っていた。

でも、そうではなかったのだ。想いあっていたと思っていたのも、勘違いだったようだ。

そう思ったのも、彼が大怪我をした後でやって来た時のことだった。こんなことを言い出したのだ。


「どうせ婚約するなら美しい方と婚約したい。せっかく、この国どころか。この世界で一番の美貌を持つ女を口説き落とせたと思っていたのに。時間の無駄になるとは思わなかった。中身が、ちょっとくらい残念でも、醜くなった方とは、婚約なんてしたくない。全く、何でよりにもよって顔を怪我したりするんだか」


その男性は、大怪我を負った想い人を見舞いに来て眠っていると思ったのか。そんなことを言った。周りは想いあっていると思っていたし、眠っているふりをしていた彼女も、そうだと思っていた。

彼女は、それを聞いて耳を疑った。そんなことを言う男性とは思っていなかったのだ。言うどころか。考えているとすら思っていなかった。

でも、眠っていると思って、そんなことを言うくらいだから、腹の底では打算的なことばかりを考えていたに違いない。

そんなことを言いながら、他に人がいると……。


「アデラインに申し訳ない」


しおらしい声で、そんなことを言った。先ほどまで、見捨てる気でいたのと同じ人物とは思えない変わりようだった。

眠っていると思われているアデラインと呼ばれた女性は、その違いを耳にして愛していたはずの想い人に手を握られたことにイラッとした。その手を振り払いたくなったが、それをしたら起きていることを知られるため、何もしなかった。

それでも、こんな男に触れられていたくなかった。本音を聞くまでは、以前はこんな風にされてドキドキしていたのが、嘘のように二度と触れてほしくないと思っていた。


「ですが、アデラインの顔は、恐らくは元には……」


アデラインの父であろう声がした。彼にそんなことを言って濁していたが、元には戻らないと言いたいのだろう。

それを耳にしてアデラインは、唇を噛み締めていた。眠っているふりをしている時に聞きたくなかった。


「そうだとしても、こんな状態になっているのに彼女の妹と婚約するなんて………。世間が許しても、彼女が許してくれるか、どうか」


眠っていると思っているアデラインにそんなことでまで自分のせいにするのかと思うような言い方をするのにこういう男なのだと思わずにはいられなかった。


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