醜くなった私をあっさり捨てた王太子と彼と婚約するために一番美しくなろうとした双子の妹と頼りない両親に復讐します

珠宮さくら

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とっくに目が覚めていたアデラインは、ようやく家族に目が覚めたと思われていた。


「可哀想に」
「……」
「どうして、アデラインがこんな目にあわなきゃならないのよ」


可哀想にと嘆く母がいた。嘆き悲しんでいて、アデラインの将来を心配しているのかと思いきやこの母はそんな人ではなかった。

この母は、どこに行くにも聞かれてもいないのにアデラインのことを自慢して回っていた。この世のものとは思えない美しい娘を産んだことが自慢でもあった。

それが、真逆に醜く成り果ててしまったことで娘の心配よりも、そんな娘を持つことになった母親として、周りの同情を買いつつ、ディアドラが王太子と婚約したことに浮かれてもいて、それにはしょいでもいた。

どちらにしろ。娘が、王太子と婚約したのだ。母親にとっては、どちらでもよかった。それを隠して、母親らしいことをしてくれたらいいが、今もわざとらしく見えてならなかったが、それにアデラインは反応しなかった。

そんな母の言いたいことを聞いた後は、王太子と婚約したことを謝罪する妹の言葉を聞くことになったが、それをアデラインはスルーした。

ディアドラの方は、姉の婚約するはずだった相手と今回のことでお互いが幸せになることこそ、姉が望んでくれることだと思っていると謝罪しているのか。こんなことになったことを受け入れろと言っているのかがわからないことを言っていて、それを聞いていた父親が眉を顰めずにはいられなかった。

どちらも、心からアデラインの心配をしてはいないのは明らかだった。どちらも、自分のことしか考えていないのだ。

そんなのを聞かされて、自分の怪我のことを聞かされれば、いくら聡明で取り乱すなんてところを見たことのない娘も、気をおかしくても仕方がないと父は思っていたが、そんなことはなかった。

まるで、話すことなどないかのようにしていて、母親も妹のことも見えていないかのようにしていた。

父親は無反応なアデラインに大怪我の話をして、治る見込みは期待できないことを伝えて、心配そうにアデラインのことを見ていた。

だが、アデラインは嘆き悲しむでもなく、悲嘆に暮れるでもなく、母と妹のこともに反応することもなく静かにしているのを見て胸が痛んだ。

こんな風に黙って聞いていることはなかった。心配かけたとか。迷惑をかけたと言っていてもおかしくはないが、そんなことを口にする気はないようだ。


「アデライン」


今後のことを話すには、まだ早いが、何も気にしなくていいと言うのも違う。それでも、父親は何かを話そうとはしていたが、それを聞く気はなかった。


「……申し訳ありません。しばらく、1人にしてください」
「わかった」


アデラインが、かなり前から起きていて、眠っていると思われて色々と好き勝手に言っているのを聞いていたとも知らない家族は、アデラインがいつもと違うことを言おうとも、あんなことがあったからだと思っていた。

家族は、すぐにアデラインの部屋から出て行った。

マルティネス公爵家の当主である父親は、配慮にかけていた。まずは余裕のない娘に顔のことをちゃんと話すべきだったが、それせずに母親とディアドラが会いたいと言うのに押し負けて会わせてしまい、好き勝手なことを言ったのだ。

その後に顔のことを話して、アデラインがどう思うかなんて考えていなかった。

それにこの父親が、肝心なことをアデラインに伝えていなかった。

アデラインの顔は、大怪我などしていないことを話していないのだ。王太子や末娘、妻やアデラインが、どうなるかを見るために色々やったことをこの4人は知らない。

ディアドラが、アデラインに何をしようとしているかをある人に教えてもらい、それを止めるのではなくて、行動させることにしたのは、この父親の判断だ。

もちろん、本当に姉の顔を醜くさせるなんてことはしなかった。ただ、本当にそんなことをするとは思いたくなくて、どうなるかを完全に止めなかったことで、こんなことになっていた。

医者や執事や使用人の中でも口の堅い者に何をするかを話して、本当にアデラインが大怪我をしたように見せるために画策したが、本人もまだ気づいていないのは、大怪我をしたと思っている顔を見る勇気がないからだ。

それをやろうとしていることを教えてくれたのは、とある人物だった。彼は、それを阻止するために父親に話したのだが、止める気がなかったというより、信じなかったことで、こんなことになったと思っていた。

伝えたのだから、最悪なことにはならないと思っていたのにアデラインが、大怪我をしたと聞いて自分のせいだと思うことになるが、彼もまた本当に大怪我を負ったのだと思っていた。

父親が、肝心なことをアデラインに話していなかったことで、アデラインが怒り狂っていることを知らずに復讐に燃えていることを知らずにもいた。

妹のことを好き勝手にさせている両親に対しても、失望しきっていることに気づけなかった。

だからこそ、この後、とんでもない目にあうとは思いもしなかっただろう。

それは、この父親にそんなことを伝えた人物も想像していなかったことになったのは間違いない。


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