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しおりを挟む(王太子視点)
何で、どうしてこんなことになったんだ。
この国だけでなく、この世界でも一番美しいと言われているような令嬢のアデラインを口説き落とした。
相思相愛の仲になれていたんだ。想いあっていた。
だからこそ、私が面倒くさがっていることをしてくれた。ちょっとアレンジを加えると失敗してしまうのが残念なことしかしないが、それでもそれは僅かで褒められることが多かったから、それをしたのを自分だと言っても、アデラインが咎めることも、怒ることもなかった。
本当に都合のよい利用価値のある令嬢だった。
なのに事故で大怪我をして顔が残念になった。そうなってしまえば、王太子妃になるのは無理だと思った。醜い顔をして隣りにいられたら、こちらの気が滅入ってしまって仕方がない。
だから、アデラインの次に美しい顔をしたディアドラを婚約者にした。他は、似たりよったりの顔をしていて、アデラインの美しさに敵うどころか。間近で見ていた私としては、比較してしまって駄目だった。
アデラインの次は、ディアドラ。それ以外は、隣りに置くに値しない女ばかりだった。
それが、思っていたより酷かった。王太子妃になる勉強をとにかくしないのだ。それに何より勉強が進まなすぎて、ディアドラの代わりに怒られてもいた。
だから、聞いて見れば……。
「ディアドラ。王太子妃の勉強が全然進んでいないそうだが、どうなっているんだ?」
「そりゃ、やっていませんから」
「は?」
あっけらかんと答えたディアドラに思わず間抜けな顔をしてしまったのは、しょうがないと思う。
「なら、ちゃんとやれ。お前はただですら授業の成績も酷いんだ。ちゃんと勉強しないと婚約し続けるなんて無理があるぞ。わかっているんだろうな? 着飾っていて許されるのは、アデラインほどの美貌を持つ令嬢だけだ」
「は?」
そこに姉のことを言ってやったら、ディアドラが睨んできたが、そんなの知ったことではない。
「もっともアデラインは、多彩で立っているだけなんてことはなかったが。私と婚約したんだ。普段の成績もトップ10には入るまでにならないと私まで笑いものになるだろ。いい加減、手を抜いてないで、本気でやれ」
「なっ、別に私は……」
手なんて抜いていないとは、ディアドラは言わなかった。それを言ったら、物凄い馬鹿だと思われるだけだと気づいてのことだろう。
今でも十分馬鹿丸出しだが、ディアドラはそもそも学園の授業もあまりよくわかっていないとは思っていなかった。わざとだと思っていた。何をしてもアデラインには勝てはしないのだから、真逆なことをしていると思っていた。それをやめさせえすればいいのに中々やろうとしないため、わざわざ口にした。
面倒くさいことをわざわざさせると思っていたが、この時のディアドラの顔を見ていなかった。
何とも言えない顔をしていることに気づいてはいなかった。
そこで気づいていたら、あんなことにならなかったかというとそうではないだろう。婚約した時に間違えたのだ。
姉の顔を醜くした女と知らずに婚約して、アデラインには共犯者と思われ、両親にもそう思われてしまった。
おかげで、王太子でもいられなくなって、マルティネス公爵家に婿入りすることにまでなった。最悪すぎる、
新しく王太子になったあいつが喜んでいると思っていたが、第2王子は留学から戻って来てショックを受けていた。
どうやら、婚約したいと思っていた令嬢に振られた挙句、なりたかったわけではない王太子になるのにこんなはずではなかったと嘆いていた。
それは私のセリフだ。留学しに行ったのに振られで帰って来たくらいなんだ。私の方が散々だ。幸せとは真逆の人生を歩むことになった。
ディアドラから逃れることは許されなかった。
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