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しおりを挟む(ディアドラ視点)
顔は双子なのだから、姉とそっくりなのだと思っていた。
それなのに姉ばかりがモテた。隣国から来た子息が姉に魅了されて婚約を解消したり、破棄したりして、元婚約者が乗り込んで来ることも多かった。
「また、アデライン様に婚約者を誘惑された犠牲者が来ているわ」
「可哀想に。婚約者が見た目がいいからってあんまりよね」
姉は、他人の婚約を台無しにしてばかりいた。私は、そんなことしたりしない。姉より性格はいいのだ。
でも、あまりにも周りに酷いことをしすぎている。そんな姉が、王太子といい感じになっていて近々婚約しそうだと耳にした。
「あんまりだよな。あれだけ他人の婚約を台無しにしているのに」
ふと聞こえてきた声に私は、共感した。
姉は酷い女なのだ。他人の婚約を台無しにして、私が狙っている王太子と婚約しようとしている。
私の幸せを奪おうとしている。私の婚約を台無しにしようとしている。
「あの顔さえ見なきゃ、おかしくなんてならないだろうに」
そうよ。あの顔が見られなくなれば、私が一番になれる。そうすれば、そっくりな私が彼に選ばれるのは間違いない。
そこから、顔を台無しにする方法を探していたら見つかった。まるで、天の導きのようだった。
そうするべきと思われているかのようにトントン拍子に準備ができた。それに喜んでいた。
更には、あっさりと姉の顔は醜くできた。誰も、私がやったと思ってはいない。事故だと思っているのだ。
それに大喜びしたが、中々目覚めない姉にこれまでの鬱憤を伝えるのも忘れなかった。それで、スッキリとしただけでなくて、王太子と婚約もできた。
これで、私は玉の輿に乗れるのだから、幸せになれないはずがない。
王太子が、私に笑いかけてくれて、とても気分が良かった。王太子の婚約者になったから、私の周りに令嬢たちもよくいるようになった。
姉のことで、色々言ってきて顔が全てのように言ってからは、納得したのか。勝てないと理解したのか。側に来なかったが、わかりやすい人たちだが、機嫌を損ねないようにしているから、腹の立つことはなかった。
何もかも上手くいっていると思っていたが、勉強をしないといけないとわかって、それにげんなりしていた。そんなことをしないといけないとは思っていなかった。
王太子妃となって、ゆくゆくは王妃になるのだ。勉強なんてせずに贅沢三昧ができると思っていたのに違っていたのだ。詐欺にあった気分だ。
「……こんなに勉強しなきゃいけないなんて思わなかったわ」
王太子の婚約者になっているのが苦痛になってきていた。その頃には、王太子の方も私よりやはり姉の方が王太子妃には向いていると思ったようだ。美人でなくなっても、頭が良ければ使えるのだろう。
私も、婚約者でいることに疲れていたから解消してもいいかと思っていたら……。
「お前なのか?」
「え?」
「実の姉の顔を醜くしたのは、お前がやったのかと聞いているんだ!」
「っ、!?」
王太子が怒って現れて、そんなことを言われて驚いてしまった。
確かにやったが、王太子まで共犯になっていることに驚かずにはいられなかった。
「どうなっているのよ!?」
姉にそれを聞こうとしたが、色々とバタバタしてしまって中々会えなかった。
ようやく落ち着いて家で姉を探した時には、もういなくなっていた。
「は? 修道院に……?」
「そうだ。とっくに修道院に行った」
「とっくに……?」
父は、疲れた顔をしながら教えてくれた。
母は、王太子妃になれずに王子となった彼が、この家に婿入りすることになって騒いでいたが、そんなのに構っていられなかった。
王太子妃になるのも嫌だったのに。この家の跡継ぎになるのだ。これまた、勉強三昧の日々から逃れられなくなっただけでなくて、元王太子から王子になった彼からは色々と言われることになり、幸せとは程遠いことになるとは思いもしなかった。
だから、必死になって姉を連れ戻そうとしたが、修道院をしらみつぶしに探しても見つかることはなかった。
こんなはずではなかったのに。顔が良ければ、何でも手に入ると思っていたが、そんなことはなかったことに今更、姉の顔を醜くしたことを後悔しても悪かったと思うより、この家のことを全部押し付けていなくなったことが許せなかった。
「何で私がこんな目にあわなきゃならないのよ!」
そんなことを思って姉にしたことを申し訳なかったなんて思う余裕もないまま、全く頼りにならない王子をあてにできないからと仕方がなく勉強をして頑張る日々にストレスがたまってならなかった。
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