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しおりを挟む千沙都は中学での部活を引退してから、髪を伸ばし始めた。卒業式の時よりも、高校入学までに更に伸びていた。
(私って、髪の毛伸びるの早いのかな? うーん、ちょっと切ろうかな。長すぎると面倒だし)
千沙都は、鏡とにらめっこしていた。
母は、そんな風に髪を伸ばすようになった娘が嬉しかったようだ。
「どうしたの?」
「伸ばしっぱなしになってるから、ちょっと切ろうかなと思って」
ちょっと切ろうと思っていると言うとそれならと母が馴染みの美容院に電話してくれて、母と一緒の日に切ることになった。
(この時期、美容院の予約が取りづらいとか考えたことなかった。……いい人そうだけど、変にされたら、どうしよう)
千沙都は、母の馴染みの美容院というので、どんな風になるのかとはらはらしていたが、千沙都の要望を取り入れつつ、髪の手入れがしやすいようにしてくれた。それに千沙都はホッとしつつ、急に予約して対応してくれたというのに内心で色々と思っていたことを反省した。
美容院に行った後で、そわそわしている千沙都を見た母は……。
「ふふっ、とっても似合ってるわ」
「先輩とかに目をつけられないかな?」
「可愛すぎるって?」
「っ、」
(何で、そっち? そんなことを考えるほど、自惚れてない)
母は、そんなことを言った。千沙都は、それにぎょっとした。
「そっちの心配はしてない。変な目立ち方したくないだけ」
「まぁ、今どきの女の子は可愛い子が多いから、千沙都だけが目立ちすぎることはないと思うわよ?」
「……」
母親の言葉に千沙都は、確かに可愛い子が多いから自分程度なら目立つこともないかと思うのも、すぐのことだった。
千沙都は、自分の可愛さなんて大したことはないと本気で思っていた。
ロングヘアとなって、益々おっとりとした雰囲気が増したようだ。
千沙都が選んだ高校は電車で通うところにあって同じ中学校からは、そんなに行く人がいないようなところのせいか。千沙都が帰宅部を速攻で選んだが、中学の時のことで何も言われることはなかった。
中学時代までとは見た目が、ガラッと変わったせいか。高校で、それまでの部活と同じところからスカウトされることもなかった。
そもそも選んだ高校が、その部活が弱いところで有名なところで、千沙都のようなのが入って来るとは、そもそも思っていなかったのもあったようだ。部活で選んだわけではないし、ましてや高校でまで同じ部活をやる気がなかった。
千沙都としては、レギュラー落ちしたことなくとも、そこまで有名ではなかったからスカウトが来るわけがないと思っていた。それが髪型1つで雰囲気が変わりすぎていて、その界隈で有名だったのにスカウトに来なかったなんて、思ってもいなかった。
それこそ、高校でも勧誘されていたら断りきれずに中学の時のように部活に入っていたかも知れないが、そうなることはなかった。入ったところで、初戦で勝てるまでになるのも難しいレベルなことに千沙都は卒業してからも気づくことはなかった。
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