見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

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自分たちが卒業するというのに千沙都は、こんなことを思っていた。


(これで優秀な新入生が入ってきたら、即レギュラー落ちしそうなのばっかりが寂しいと言いながら、涙どころか。目も赤くはなっていないのよね。それこそ、厄介な先輩が卒業さえすれば、レギュラーは簡単に死守できる程度の実力はあると思っているみたいだけど、優秀な人材を確保できなければ新年度は初戦を危ういって自覚が全くないみたいね)


千沙都は、内心でそんなことを思っていた。多分、卒業する他のメンバーも似たりよったりなことを思っていたのではなかろうか。

それこそ、全く危機感のないメンバーにあれこれ前まで言っていたのもいたが、いくら言っても危機感がないままだった。


(これは、優秀な新入生の勧誘をする気がなさそうね。それこそ、優秀な子が入ったら自分たちがレギュラーでいられなくなるもの)


レギュラー陣が、総入れ替えになるのもそう遠くはないようなメンバーだが、新入生の勧誘が上手くいかなければ、レギュラーの入れ替えはない。自分たちが残るためにあまり力を入れなさそうだと卒業生たちは、薄々気づいていた。

そういう姑息な手段を選ぶような面々ばかりがレギュラーになっているのだ。卒業生より泣いている後輩には申し訳ないが、在校生たちがどうにかするだろうと口出しすることはなかった。監督も、定年退職するから新年度の心配をしているようで、あまりしていないのも原因があるようだ。

その後、中学校で部活が一緒だった友達からは、新入生の確保にあまり力をいれなかったらしく、新しい監督もあまりやる気のない人になったようで、レギュラーたちが交代することもなく、そのレベルで落ち着いた部活動となったようだ。そのため、初戦で負けたと聞いても、大して驚くことはなかった。


(むしろ、初戦で勝てると思っていたことに驚くわ)


千沙都は、勝つ気満々だった今のレギュラーたちが初戦で、呆気なく負けたことに納得できなかったと友達から聞いて、遠い目をしてしまった。

相手のチームに色々と言ったレギュラーがいたらしく、監督もそれを宥められなかったようで厳重注意を受けたというのも、OGたちに瞬く間に広まることになったが、優秀な人材の確保の重要性を新しい監督に力説しても、全く伝わらなかったようだ。その辺のことも千沙都のところまで筒抜けとなっていたが、千沙都がそれに関わることはなかった。


(あのメンバーとやれたのは楽しかったけど、その後のことにまで興味ないのって酷いのかな……?)


中学でレギュラーだった面々は、高校に入っても同じ部活に属している者ばかりのようだ。

その中で、唯一千沙都だけがきっぱりやめて帰宅部を満喫していた。だが、千沙都が運動部に入っていないと誰も思ってはいなかったようだ。

もしかするとその手の話題が出ていたら、千沙都の帰宅部を満喫するのも、危うかったかも知れないが、千沙都の高校はその部活がそんなに強い学校ではないらしく、中学でレギュラーだった面々が千沙都が居ないことに気づくことはなかったほど弱かったようだ。

後半の弱いうんねんのことを千沙都は知りもしなかった。弱いから、その高校を選んだわけではない。そんな理由で高校を選んではいないが、結果としてそのおかげで部活が念願叶った帰宅部となれたのだ。全部を知っていたら、複雑なものを持っていたかも知れないが、千沙都が持つことはなかった。

それこそ、これを喜んでいいのかがわからないが。


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