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しおりを挟む「アインシュタイン。寝るの?」
アインシュタインは、チラッと千沙都を見て反応薄く寝床で丸くなるのを羨ましそうに見ているしかなかった。もう、かなり眠いようでぼんやりしているように見える。
(なんか、羨ましいな。私も二度寝したい。添い寝したい)
愛猫の猫らしい姿を見ながら、千沙都もぼんやりとしてしまっていた。朝食も食べるのも忘れて、アインシュタインの丸まって眠る姿をぼんやりと眺めていた。そんな光景なら、ずっと見られる。
平日の朝だというのもすっかり忘れてしまうほど、その光景にほんわかとした雰囲気も何もしたくなるような効果があった。
すると母が、リビングにやって来て娘がまだいることに驚いたようだ。
「千沙都? まだ、いたの? 遅刻するわよ?」
「え? あ、まずい!」
アインシュタインの一挙手一投足が気になってしまっていた千沙都は、朝食を余裕で食べている時間を有に越していることに気づいていなかった。
母親に声をかけられなかったら、完全に電車に乗り遅れて遅刻していただろう。運動神経だけは無駄にいいこともあり、ぜーはーしながら、何とか間に合うことになり、千沙都はホッとしていた。身体はあまり鈍っていないようだ。
(今日は、随分と遅めに出てったから、朝の散歩には会えなかったわよね)
そんなことを思っていれば、その日も連絡が来ていた。兄は会えないものと思っていたら、めっちゃ急ぎながらも、目撃情報を千沙都に知らせて来たのだ。
(偶然だよね……?)
そんなことがあってから、千沙都は以前にも増して愛猫の観察をするようになった。そのうち偶然ではないことを察するまでになったのは、割とすぐのことだった。
高校に入って初めての梅雨の鬱屈した毎日が始まって、ようやく気づけたことを千沙都以外の家族は知りもしないままだった。
その辺に変な優越感が、千沙都にはあった。でも、千沙都に対して学校に行かせまいとする行動をしてもらえないことに嫉妬し始めていた。
「アインシュタイン。そこで、寝るな。頼むよ。靴を温めてくらなくていいんだ」
父の声がして、千沙都が玄関を見に行けば、いつぞやの鞄の上ではなくて……。
(靴の上で寝てる。そんなとこでも寝れるんだ)
千沙都は、慌てている父には申し訳ないが、あの手この手で麻呂サンの散歩の動向を見守る手助けを密かにしているアインシュタインに内心で拍手喝采していた。
(……あれ? 今日は、父さんじゃなくて、兄さんから連絡がきてる。……あれ? もしかして、ただ単に眠かったから、とか?)
父は、言葉だけでは駄目だと強行突破をして、引っ掻かれていた。
「アインシュタインの爪が伸びてるから切った方がいい」
「そう、切っとくわ。はい。絆創膏」
引っ掻かれた父に母は絆創膏を渡していた。それを聞いて千沙都は目をパチパチとさせた。
(あれ? 爪切りなら、昨日やったんじゃなかったっけ?)
父を母と2人で見送ってから、アインシュタインを抱っこしていた母は爪を確認した。爪を確認されて、アインシュタインは何とも言えない顔をしていたが、逃げる気はないようだ。
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