見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

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公園のことや花粉症うんねんのことを家族に話すことになったのは、兄が千沙都にどうなっていたかを聞いてきたせいだ。


「えっと」
「なんだ。聞かなかったのか?」
「あー、聞いたよ。えっと、幼なじみが言うには……」


千沙都は、言い淀みながらも、聞きたがる怜久に答えるしかなかった。阿呆らしいことをしていることを知って、千沙都はその話をわざわざする気がなかったが、遠い目をしながら聞かれたのだからと話した。

言葉にしながら、今回もわけがわからないことになっていたことを家族は何とも言えない顔で聞いていた。両親も、聞くだけ聞いて特に何か言うことはなかった。掘り下げたくなかったのだろう。

聞いてきた方は、ふ~んと言う程度で特に詳しく聞きたかったわけでもなさそうにしていたのを見て千沙都は……。


(その記憶力を他のことで使えばいいのに。もっと別のことを覚えておくべきだと思うけど)


そんなことを思ってしまった。すると母が、それを見かねたのか。兄に話しかけた。


「怜久。お代わり食べる?」
「え?」
「お肉よ。たくさん作ったから、まだあるのよ」
「食べる」
「私も、もう少し食べようかな」
「あなたは、お野菜食べてからね」
「……」


母はお代わりを取りに席を立つと父は肉のお代わりを食べたかったのに残されている野菜を見て、娘を切ない目で見てきた。仕方がないと千沙都は、残っている野菜をこっそりと食べることにした。

それは、母にバレないようにしたはずだったのだが……。


「……」
「あの、母さん?」
「お野菜食べたから、お代わりよ」
「「……」」


にっこりと千沙都のところにお代わりの肉が置かれた。それに父は何とも言えない顔をした。


(バレてる)


千沙都は、にっこりと笑う母と野菜を娘に食べてもらったことがバレていたことに父が小さくなっていて、兄は黙々とお代わりの肉を堪能していた。こういう時の兄は、空気を読むなんてしたことがない。いや、そもそも何が起こっているかをわかっていない気がする。


「えっと、私、お腹いっぱいだから……」
「マジか? なら、もらい」
「「……」」


怜久が、あれだけ食べても食べれたようだ。父にあげると言う前に兄の腹におさまったことに千沙都は、あり得ない顔を兄に向けていた。父も同じような顔をしていた。


(兄さんもは、信じられないくらい鈍感よね)


しょんぼりする父と一部始終を見ていた母と娘と我関せずな息子。何とも言えない空気が流れることになった。


(この空気の中で、よく平然とできるものだわ。こんなんで、カノジョに愛想を尽かされるのもすぐになりそう。……それにしても、この雰囲気をどうしてくれるのよ)


この日の夕食は、千沙都はいたたまれなさが半端なかった。


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