見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

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怜久の兄が、千沙都しかいない時に家でカノジョの話題を聞かせてくることが増えた。最初は遠回しに友達のカノジョのことという体で相談されていたが、もうわかりきってるから友達をわざわざつけなくてもいいと言うと開き直ったようにカノジョと言うようになっていたが、相談するのをやめることはなかった。

惚気なら、千沙都は一切受け付けないと言っているが、どんな話をする気だとその日も、最初はあまり乗り気で聞いていなかった。毎回、ついつい気になってしまって助言やらをしてしまっているせいで、カノジョとは上手くいっているようだ。


(私が助言したことを実行しているだけなら、そのうち上手くいかなくなりそうだな)


なんてことを千沙都は思っていた。


「カノジョの弟がさ。犬飼いたいって、大騒ぎして飼うことにしたらしいんだけどさ」
「……それで?」


怜久が、千沙都にカノジョの弟のことを聞いたのは、学校であんなことがあってからしばらくしてからだった。


(弟がいるんだ。それは初耳だな。……いや、前にしてたのを聞き逃したのかも。まぁ、いいや)


聞いたか、聞かなかったかをふと考えたが、思い出せそうもないので、兄の言葉に集中することにした。


「全然、躾が上手くいかないらしいんだよ。しかも、弟は世話を自分がやるって言ってたのに全くしなくなってカノジョが、ぶちギレて怒ったらなんて言ったと思う?」
「さぁ? わかるわけないじゃん」


(それと聞きたくない)


千沙都は、そう思ったが、それを兄に言うことはなかった。続きが聞きたくないはずなのに気になってしまったのだ。


「それがさ。好みの女の子をドッグランでたまたま見つけたとかで、その子と仲良くなりたいがために犬を飼ってくれって強請ってたのにそれが勘違いだとわかって、世話する気が失せたとか、平気で言ったらしい。それから姉弟喧嘩になって、親も説教しても最終的に勘違いさせた女の子が悪いって逆ギレしてるらしい。世の中には、そんな理由で動物飼おうとする奴、居るんだな」
「……」


(それって、まさか……)


つい最近、そんなことが身近にあったことと似ていて、千沙都は視線を彷徨わせてしまった。


(こんな偶然あるの……?)


これは聞き流してはならない気が千沙都にはした。なぜかはわからないが、直感でそう思ってしまったのだ。関わったら面倒くさいことになるだろうが、関わらないわけにはいかない気がして、思わず兄を見ていた。


「……兄さん」
「ん?」
「兄さんのカノジョって、仲宗根って苗字?」
「そうだけど、俺、カノジョの苗字、教えたか?」
「いや、聞いてないし、聞く気はなかったんだけど。同じなら、その弟くん、うちの学校にいるかも」
「は? マジか?」


怜久は、溜め込んでいられなくて話していただけで解決する気はなかったのかも知れない。でも、千沙都はそんな話を聞いてしまっては、続きを話さなくては気が済まなくなってしまった。


(こんなことを兄さんに話す日が来るとは思わなかったわ)


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