姉が私の婚約者と仲良くしていて、婚約者の方にまでお邪魔虫のようにされていましたが、全員が勘違いしていたようです

珠宮さくら

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プレストン侯爵家に戻って、すぐにアミーリアは父の書斎に突撃しに行った。

オーガスタは、姉が一直線に父のところに行くと思って、母を呼びに行った。


「お父様!!」
「……今度はどうした?」
「デイビーズ伯爵家のバージルが、次女と婚約したと両親に聞いたと言っていました。どういうことなんですか!!」
「また、そのことか」


アミーリアは怒り心頭になっていて、様付けをしなくなっていた。

だが、オーガスタも同じ気持ちだったから、敬称抜きに何も言わなかった。それどころか。あの勘違い子息と言ってやりたくなかったが、そこまでは頭の中だけにとどめておいた。

オーガスタは母を呼びに行って、姉の後から入った。


「確かに聞きました。私たちだけでなくて、他の令嬢も聞いています。ですので、もう一度、確認したくて」


父のみならず、母も怪訝な顔をした。娘たちの勘違いでは、済まされないことに母も確認すると言い出し、父はすぐさま動いて書類を見せてくれた。

それこそ、娘たちがこれだけ必死になっているのに父は、母が絡まないとやる気が起きないようだ。

そんな父に姉妹揃って、白けた目を向けていたが、妻に向けられない限りは、どうでもよいようだ。

だからこそ、オーガスタは母を呼んで来たのだが、姉は妹が母を連れて来るのは見越していたようだ。


「……やっぱり、オーガスタとチェスター様になっているわ。何なのよ」
「でも、ご両親から聞いたと言っていたのに変ですね」
「確かにそうよね」


姉妹揃って、バージルがあそこまで言っていたのに変だとばかりに首を傾げていた。

バージルは、頑なに両親からそう聞いたとしか言わないのだ。だとしたら、あちらの両親が息子にどう説明したかだ。あそこまで思い込んでいるのだ。その辺をどうにかしなくては、またこの屋敷にやって来かねない。

それこそ、オーガスタが次女だと知ったのなら、今度はオーガスタが相手をしなくてはならなくなるが、あんなのの相手なんてしたくない。

アミーリアも、あそこまで馬鹿にされたのだ。それに婚約者でもないし、オーガスタの婚約者でもない相手なんてしたくないはずだ。そのため、姉妹揃って必死になっていた。

それがわかったのか。母が、こう言ってくれた。


「旦那様。あちらに確認してもらえますか? このままでは、埒が明きませんわ。それにその子息のことですから、今度はオーガスタに会いに来るかもしれません。いくら、兄弟でも、兄の婚約者なのに2人っきりでなんて会わせられませんわ」
「そうだな。アミーリアが、上手い具合に勘違いしていたから、よかったようなものだが」
「……」


アミーリアは、父の言葉に何とも言えない顔をしていたが、微妙な褒められ方を両親からされて、全く嬉しくなさそうにしていた。わかる。それは、褒めていない。

オーガスタが、姉の立場なら怒られた方がマシだ。心の傷を抉っている。

そもそも、我が家の父がこうなのだ。あちらの家も似たようなものかも知れないとオーガスタは、そんなことを思っていた。

あの息子があんな感じなのは、昔からのはずだ。だとしたら、両親も似たりよったりかも知れない。

留学している長男がまともだといいが、会ったことがないため、婚約者に全く期待できなくなっていた。

婚約しているのに。婚約していれ本人に会う前にすっかり疲れ切っていた。


「まぁ、いいわ。オーガスタ」
「……何?」


色々と考え込んでいると姉に呼ばれて、思わず身構えてしまった。


「この書類を見る限り、チェスター様と婚約してるんだから、バージルに絡まれたら言いなさい。私が蹴散らしてあげる」
「お姉様が?」


なぜ、そんなことをしようとしてくれるのかと思って姉を訝しげに見つめた。


「あんな風に馬鹿にされたのよ。言い返してやらなきゃ。私たちの婚約者ではないんだもの。ただの勘違い男でしかないわ。ただじゃおかないわ」
「……」


自分の婚約者だと思って、楽しそうについこの間まで語らっていたとは思えない目をしていた。


「……いいの?」
「いいのよ。それとオーガスタ。誤解していたとは言え、色々言って、悪かったわ」
「ううん。私の方こそ、ごめん」


内心で、姉が口にしていた何倍も酷いことを言っていた。それを口にしていたら、こんな素直に謝罪されることはなかったはずだ。

両親は、謝罪しあって仲直りしている姉妹に驚きながらも、すぐに母はにこにこした。


「今日は、酒が飲みたいな」
「お酒もいいですが、まずばデイビーズ伯爵家に確認してからにしてください。それまでは、お酒はお預けです」


あまりにも娘たちが仲良くしているのを見て気分を良くした……のではなく、母がにこにこしているのを見た父は、それにご機嫌になっていたのだが、母に止められて、しょんぼりしていた。

こんな時も、母が一番なのは変わりないところが父だった。

それを見聞きして、姉妹はアイコンタクトをとって肩をすくめた。


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